【王様と乞食シリーズ】批評無き環境に、改善は無い。コミュニティ、組織に於ける環境作り。
2008年4月23日 11:07 PM
臣「どうなされました、王様。」
王「右大臣が、政治のことで悩んでおる。ワシとしては方向性を変えるようにアドバイスしたいのじゃが…」
臣「わかります、王様。彼は自尊心が強く、人の批評を聞き入れない。しかし、尊敬する王様の批評を受けると、ショックが強すぎて仕事に対する自信を喪失してしまうかもしれませんな。」
王「そうなのじゃ…。何かいい方法は無いものかのぅ。」
臣「王様、町衆が困ったときに相談するという、たいへん利口な120歳の乞食がいるそうです。ひとつ、そこに出向いて見てはいかがでしょう。」
王「おお、それはなんとも良い考えじゃ。」
乞「王様、話は伺いました。」
王「そうなのじゃ。困り果ててのう。老練で老獪な乞食殿、どう思われる。」
乞「老練ではありますが、老獪は心外ですな。しかしこれは王様。王様の気持ち一つにございます。」
王「ほう。と、いうと?」
乞「王様が、今の彼ならば、結果的に、一緒にいても仕方がない。将来性がない。5年後はお付き合いをしていない、と思うのであれば、意を決し、王様の評価を伝えたほうがようございます。」
王「ほう、そうか。」
乞「はい、批評を受け止めない、批評を受け止めきらない人間は、成長も見込めません。成長性無き人間との関わりが、王様に必要でしょうか。」
王「フォッフォッフォッ。乞食のくせに割り切りよるのぅ。」
乞「は。しかし、その辺は私の老練な部分でございます。」
王「確かにのぅ。」
乞「もし王様が、彼を失うこと自体が大きなリスクなのであれば、言わない方が賢明でございます。恐る恐る、中途半端な伝え方をしても、人はなかなか改善いたしませぬ。」
王「なるほどのぅ。しかし、どちらにしても踏ん切りがつかんのぅ。なにかいいアドバイスはないかのぅ。」
乞「私は、王様が本当のことを、大臣様に伝えたほうが良いと思われます。」
王「ほう、どうしてじゃ。」
乞「心から相手のことを想って伝えた批評は、相手も嫌な気が致しませぬ。万が一、批評相手が王様のもとを去ることになっても、見込みのある方であれば、改善して連絡くださることもあるでしょう。」
王「フォッフォッフォッ。確かに。パワーアップした彼を待つのも、人生の愉しみの一つかもしれぬな。」
乞「もし、相手に嫌われたとしても、王様の批評が正しければ、彼女が成長してから気付きます。要は批評を伝えるときの誠実さ、批評の客観的精度が重要ということです。」
王「そういうもんかの。」
乞「はい、王様。私をご信用くださいませ。」
批評無き環境に改善は無い、と言われる。
だが、批評することは簡単だが、それを相手に直接伝え、改善まで結びつけることは容易ではない。
●関係破壊のリスク
良い批評を伝えることは人間関係の構築に繋がるが、批判的な批評を伝えることは人間関係にダメージを与えることになりかねない。
上司なら、後に自分が不利になる恐れがあるし
部下なら、ふてくされてしまう可能性がある。
友人なら、友情が大破壊されてしまうかもしれないし、
恋人なら、愛情が減る危険性もあるだろう。
批評とは、大きなリスクを伴う行動である。
●主観的に見ても、客観的に見ても、正しいと思われる批評は難しい
世の中では定量的ではないものに対して評価を行わなければいけないシチュエーションがある。
定量的なものは、非常にわかり易い。
テストの点数や、試合の勝ち負け、お金や他の数字に換算できるものなどである。
こういったものは、批評の必要も無いものが多く目標や改善点も指摘し易い。
これに反し、定量的でないものは、音楽、絵画、ファッション、ルックス、などのセンスや流行に左右されるものもある。
ご想像の通り、価値観が固定されないため、目標や改善点が指摘し難く、改善点はレベルの高い細分化を要することが多い。
さて、様々な心的、物質的リスクの多い批評行動であるが、批評無き環境に改善は無い。
では、リーダーシップを取る人間は、どういった行動を取れば良いのか。
●環境
私は環境の整備だと考える。
「日常的に批評を行う」コミュニティ(私の場合は職場)の形成であろう。
日常的に批評が行われれば、自然と改善に結びつく意見も多くなり、また優秀な意見が出てくれば、つまらない意見は埋没するだろう。
ハッキリ意見を言うアメリカ人が多いのも、環境ではないだろうか。
実際、アメリカの大学ではディベートが授業として採用されているし、MBA取得にディベート力は必須である。
基本的に、日本人は「言わずに済ませる」のを美と感じる人が多いように感じる。
そんな民族に流れる基礎意識の中で、「批評があって当然」のコミュニティの形成は難しい。
だが、難しいからこそ価値があるのではないか。
変えた方がいい、改善できる可能性がある、そういった部分については批評していける会社作りを行っていきたいと思う。
そのためには、意思ある人間が批評する機会を持ち、批評を「改善の機会」と歓迎する環境と雰囲気がマストだろう。
もちろん、私自身も批評を受け入れなければならない。
私は血の気が多いので、批評された瞬間は、「なんでお前にそんなこと言われなアカンねん!」と、反論してしまうことも有る。
しかし、後々思い出してみると、「アイツがいうことももっともだな」、と考えることも多いのである。
ただ、誰を相手にしても、批評をする瞬間、批評をされる瞬間は非常に気まずい。
それを乗り越えられるのか…
昔、私が場末の焼酎Barで友人の相談に乗っていたとき、彼女がぼそりといいました。
「ホントに、その人のことが大切なら…
大切な人に、嫌われても、一生会えなくなる危険があっても、指摘するべきよね…」
アナタはどっち派ですか?
【著者紹介】 山本昌一
株式会社shoichi代表取締役
所属団体:KanFa関西ファッション連合/日本繊維機械学会/JAFIC 一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会
大学在籍中からヤフーオークションでブランド商品・アパレル等の販売などを行い オークションで仕事をする自営業の道を選ぶ。 その後在庫処分ビジネスをスタートし、20年間在庫処分の業界に身を置く。 累計4000社のあらゆる在庫処分を手掛ける。
山本昌一プロフィール>>