新品の服、売れずに廃棄「年10億点」 人気ブランドも
倉庫に山積みの段ボール。中身は、捨てられる寸前だった服だ。ニット、パーカ、スカート――。大手通販業者や若者に人気のブランドの商品など、「新品」ばかり。新しいデザインの服が安く買えるようになった陰で、大量の売れ残りが発生している。
大阪市の在庫処分業者「ショーイチ」の倉庫には常に30万~40万点の服がある。「売れ残った、少しほつれていたなど、ここに来る理由は様々。一度も売り場に出なかった服もある」と山本昌一社長は言う。アパレル業者や工場など年間約600社から、500万点が持ち込まれる。「メーカーも売る努力はしているが、服は好きなものじゃないと着ないので難しい」
定価の1割ほどで買い取り、タグを外してブランド名が分からないようにして、自社のサイトやイベント会場などで販売している。見栄えのいい写真を掲載するなどの販売努力をして、定価の17~18%でようやく売れていくという。
しかし、そのまま捨てられてしまう服も少なくない。東京都内の産業廃棄物処理業者は、銀座に店を出す有名ブランドから売れ残った商品の処理を依頼された。
「洋服のほか、靴やカバンなど収集車3台分。すべて破砕して焼却してほしいと言われた」。1点ずつ処分の証拠写真も求められた。「横流しされるとブランドが傷つく恐れがあるし、倉庫に保管すれば資産となり税金がかかる。だからあえて焼却する」
新品衣料の売れ残りや廃棄の統計はないが、国内の年間供給量から年間購入数の推計を差し引くと十数億点にもなる。再販売される一部を除き、焼却されたり、破砕されてプラスチックなどと固めて燃料化されたりして実質的に捨てられる数は、年間10億点の可能性があるともいわれる。(仲村和代、藤田さつき)