【2022年】コロナレポート オミクロン株と在庫処分業者
2022年1月17日 12:42 AM
在庫処分業者の観点から、2020年から現在までのコロナウイルスが国内の在庫にどのような影響を与えたのかをまとめました。
弊社代表山本と営業部長高橋の対談形式でレポートしております。
最後に今後のオミクロン株の影響と今後の予測の私見を書いています。
小売り業の方に少しでも参考になればと思います。
2020年コロナショックスタート
日本国内では2020年3月からコロナショックがスタート。
2020年4月~5月には緊急事態宣言の発令により、百貨店やモールが閉まって、GW商戦が大失敗しました。
GWで夏物を中心に売上を見込んでいるので、この時期に販売ができなかったのは大打撃です。
・2020年SS在庫処分のポイント
【アパレル】
急なことで、各社によって処分する商品が違いました。
一番のポイントは2020年SS(春夏)商品の行き場をどうするかが問題となりました。
①2019年以前のものを処分してスペース確保する
②2020年SS商品の一部を処分してスペース確保する
弊社の問い合わせ内容から多かったのは上記2パターンでした。
【その他の商品】
GW以降、市場でコロナ対策グッズが溢れ価格の低下が起こりました。
そのため、コロナ関連商品の在庫処分依頼が増加しました。
・2020年AW在庫処分のポイント
コロナは風邪に似た症状のことから、インフルエンザ同様に冬季の感染拡大の予想がされ、警戒感が強まりました。
店頭での商品仕入れの対応は
①新作は少量追加
②キャリー品で対応
③新規メーカーから仕入れで対応
以上のように、通常とは異なる対応を行っていました。
返品や販売できなかった商品で、倉庫スペースが圧迫され、在庫処分を初めて開始されたメーカー様が多数ありました。
また、新型コロナウイルス感染症特別貸付を受け、在庫処分で発生するマイナスを埋め合わせる形の対応をされていました。
(株)shoichiとして2020年総括
shoichiでは例年の2倍近くの買取量となりました。
アパレル、その他雑貨を含め、4000万点以上の買取を行っています。
代表山本(以下、敬称略):日本国内では、2020年3月からコロナショックがスタートしました。
2020年は、突然、初めてのコロナショック、初めての緊急事態宣言ということで、百貨店やモールが閉まって、そもそも在庫あるのに売れないという状況が発生しましたよね。
特にアパレルだけじゃなくて生活雑貨などは棚に置けないからということで、在庫処分がすごく出回りました。
当然売り上げも立ちませんでしたね。
2020年の在庫処分に関して、どんなポイントがありましたか?
営業部長高橋(以下、敬称略):2020年、アパレルその他雑貨に関しても、お店に在庫を並べたままお店が閉まってしまっってしまいました。
緊急事態宣言でお店が閉まっていたので、お店に在庫がある状態のままでした。
緊急事態宣言後、その店頭在庫を販売するんですが、ここで大切なのが緊急事態宣言の発令により、ゴールデンウィークの商戦を逃したことによって売り上げが立たなかったことです。
ゴールデンウィークに大量に売れる予定だったが、商品が動かなかったってので、今度は2020年の秋冬の商品の入れ替えのために店頭在庫をメーカーや倉庫に戻さないといけないんですけど、戻す場所が無いんですよね。
秋冬商品のスペースを確保するために在庫処分を行った企業様が多数ありました。
山本:店頭在庫を戻す必要があったということですね?
高橋:店頭在庫がある状態ですが、次シーズンの商品に入れ替えが必要なため、ところてん方式で店頭在庫をなんとかしないといけない状況でした。
では、店頭在庫をどこに移動させるのか?
山本:通常なら、倉庫ですよね?
高橋:そうです。
通常なら倉庫に移動させますが、年間でも一番商品が売れる期間(ゴールデンウィィーク商戦)に売上がゼロだったため、動かす在庫の量が例年の数倍になっていました。
山本:残っている商品が多く、倉庫で受けきれる量では無かった、ということですね。
高橋:そもそも倉庫で受けきれる量では無かったし、また、その在庫量を倉庫で受けたため、日本国内の倉庫がどんどん埋まっていってしまいました。
その結果、倉庫代が急激に上がりました。
山本:倉庫代は上がりましたね。
20%くらい上がっていると聞きました。
そして、その他にもゴールデンウィーク以降にコロナ対策グッズが溢れて在庫増加となり、供給過多になったため、価格の低下を招きました。
コロナ関連商品の在庫処分も多数発生したということですね。
高橋:コロナ関連商品の在庫で日本国内の倉庫が埋まってしまったことも、倉庫代上昇の原因になりました。
山本:そして、2020年秋冬では、どのような変化がありましたか?
高橋:コロナウイルスが風邪に似たウイルスだったため、インフルエンザ同様に冬季に感染拡大の懸念がありました。
そのため、製造業その他小売業も秋冬は新商品の投入を控えめにしようという動きがありました。
2020年春夏のことを考えた結果ですね。
山本:新商品の投入を控えめに下ということですが、具体的には?
高橋:新商品に関しては、そんなに量を積まないで少量だけ投入する動きがありました。
去年の商品をそのまま店頭に並べる店舗が多かったのですが、それだけでは店頭が埋まりません。
その場合に、新規メーカーから新しい商品を仕入れて、広く浅くお店作りをされていたのが、2020年の秋冬シーズンですね。
山本:それでは、新作の生産数が少なかったというこですね、
また緊急事態宣言が出たら、商品が売れないため大変ですもんね。
高橋:2020年の秋冬に関しては倉庫スペースの圧迫によって、在庫処分を開始されたメーカーが増加しました。
2020年の春から多数あったのですが、ちょうどこの時期に新型コロナウイルスの感染症特別貸付で、無利子無担保で貸付を受けることができたので、その貸付を利用して、この在庫処分のマイナスを埋め合わせる企業様が多かったです。
このタイミングでの在庫処分はかなりの数ありました。
山本:確かにコロナ関連の融資が出始めてから、キャッシュに余裕ができたため、在庫処分に踏み切る企業は増加しましたね。
在庫を保有していても、倉庫代がかかるだけですから。
来年売れる商品は残して、来年売れる見込みの無い商品は在庫処分してしまおう、という動きが起こったと思います。
銀行筋も2020年度は赤字でも仕方がないという雰囲気が漂っていたのも、在庫処分が促進された理由の一つだと思います。
キャッシュがあり、銀行が赤字に対して強く反応しないのであれば、メーカーとしては在庫処分がとてもしやすいです。
高橋:shoichiの2020年の総括としては、アパレルとその他雑貨を含めて、例年の2倍の買取量でした。約4000万点を買取しています。
山本:先程も話に出たように、倉庫にもう商品が入らないから、すぐに引き取ってほしいという話もすごく多かったですね。
2020年コロナ関連ニュース
■2020年3月
繊維ニュース紙面:新型コロナで在庫処分 買い取りが3倍に
■2020年4月
WWDジャパン:新型コロナで在庫処分企業ショーイチへの買い取り依頼が3倍に膨張
■2020年6月
朝日新聞:アパレル業界、コロナで苦境 「在庫処分屋」の倉庫に山
■2020年8月
繊維ニュース:コロナ禍/滞留するアパレル在庫/再販市場への流入増
■2020年10月
毎日新聞:在庫の服 買い取り販売 コロナで急増「捨てるのは悪」
■2020年11月
産経新聞:アパレル在庫ビジネス活況 大手不振、 コロナで買い取り急増
2021年も続くコロナの影響
2021年も1月から一部地域に緊急事態宣言が発令されました。4月中旬には再度の緊急事態宣言が発令され、夏には「第5波」と呼ばれる連日感染者数が拡大する状況になります。
ワクチン接種により、重症化する患者数は減少に向かいましたが、コロナウイルス変異種も発見され、予断を許さない1年となりました。
・2021年在庫処分のポイント
2020年の経験から、2020年AWと同様の対応が取られました。
店頭商品の仕入れは
①新作は少量追加
②キャリー品で対応
③新規メーカーからの仕入れで対応
オリンピック期間中に一気に感染者が増加しましたが、閉会後には一気に収束を見せました。
短納期に中国で商品の追加生産をしようとするも電力不足、コンテナ不足により納期遅れが発生していました。
(株)shoichiとして2021年総括
アパレルその他雑貨を含めて、2020年に大量在庫処分を行った経験から、2021年は生産調整が行われ、買取量は減少しました。
約2000万点の買取を行いましたが、コロナ以前の2019年と同レベルの買取量でした。
山本:2021年の春はどうでしたか?
高橋:2020年の秋冬と同じく新作は、少量作ろう、キャリー品で対応しよう、新規メーカーからの仕入れで店頭を埋めようという、同じ現象が起こっていました。
山本:メーカー様でも通常なら1000枚生産するメーカーブランドが500枚など、半分くらいの生産量だったと聞いています。
高橋:アパレルの生産調整はこの1年2年(2020年~2021年)でかなり進んだと思います。
山本:進んでいますね。2020年2021年で元々少なかった我々の同業者を含めた在庫処分業者が、さらに減りましたよね。
高橋:ブローカー的な動きをされている在庫処分業者に関しては、もう扱える商品が無いという事態が起きましたね。
そのため廃業をされた方も多いですね。
山本:買取対象の商品が我々の業界には出回らないことが続いていましたが、出るときは1件で大量の在庫処分依頼、ということがありました。
高橋:1件で数十万点、という依頼が複数ありましたね。
山本:在庫処分業者だと、ある程度の量しか扱えない業者が多く、shoichiでは大ロット・何十万点一括、という在庫を扱えるため、大ロットの在庫処分依頼が多く集まり、我々もすごく忙しい1年でした。
2021年の年間を通じてあったイベントとしては、オリンピックがありました。
高橋:オリンピック期間中に一気に新型コロナウイルスの感染者が増加しましたが、オリンピックが終わると、しばらくしてすぐに収束しました。
山本:ワクチン接種もオリンピックの前後に進みました。
高橋:6月くらいから一般の方の摂取を行っていましたね。
先進国の中でも当初はワクチンの打ち始めが遅いって言われましたが、打ち始めてから完了するまでの人数というのは、先進国トップレベルでしたね。なのでそういうのもあって一気に収束したのかなと。
山本:デルタ株に対しては、ワクチンは非常に有効だったように思います。我々も小売業、もちろん在庫処分業も、ワクチンでコロナはもう収束するんじゃないかという空気は漂いましたね。
高橋:はい。そういうのもあって11月12月とかなり人の出もよく、商品も売れていましたね。売上もだいぶ回復していました。
2021年コロナ関連ニュース
【PR】マスクバブルに関し、卸値、法人在庫処分、個人取引、あらゆる観点から価格の推移を観察
コロナ禍のアルコールジェルの卸値、法人在庫処分、個人取引、あらゆる観点から価格の推移を観察
■2021年3月
朝日新聞:積み重なる衣料 苦境のアパレル、余った在庫の行き先は
■2021年6月
日経新聞紙面:アパレル、難路の在庫削減
■2021年10月
PR:2021年アパレル在庫買取数がコロナ以前の2.5倍を継続
2022年オミクロン株が日本国内でも増加傾向
2022年に入り、オミクロン株が日本国内でも増加傾向となっています。
円安と生産量減少により製造コストが上がっており、ほぼ全ての商品が値上がりしている状況です。
2022年も緊急事態宣言乱発となると、企業が継続が難しくなってきます。
企業としてはウィズコロナの生活様式に合わせた運営を選択し、新たな販売チャネルや最近では無人店舗もできています。
経営判断として、提供するサービスの選択が迫られています。
◆ウィズコロナの生活様式とは(厚生労働省発表)
【買い物編】
・通販も利用する
・少人数で空いた時間に行う
・電子決済利用
・計画的に素早く済ませる
・サンプルなど展示物への接触を減らす
・レジに並ぶときは前後に間隔をあける
2022年の予測-小売業には非常に厳しい一年に・・・
山本:2022年、我々も想定していなかったですけど、オミクロン株当初は全然流行ってなかったですよね。
数日間で一気に感染拡大しました。
高橋:正月休みもあって、正月明けには倍増しましたね。
山本:オミクロン株だけでなく、円安の影響によるその輸入商品の原価の高騰、プラス生産量を細かく生産しますので、これもまた製造コストを押し上げる原因になっていまして、ほぼ全ての商品が値上がりしています。
企業としてはもう販売価格を上げざるを得ない状況になっています。
先程の生産量の減少というのは、「緊急事態宣言が出てまた在庫が残るかもしれない」から、細かく小ロットで作ろうというニュアンスになっていますよね。
高橋:そうですね。
山本:当然、緊急事態宣言が出なかったとしても、細かく作っているので原価は上がるし、当然緊急事態宣言が出たとなれば、また、メーカーも当然ユーザーである消費者も大変な状況ではあります。
高橋:2022年に関してはウィズコロナの生活様式に合わせた製造方法だったり、店舗運営というのを選択していかないといけません。
このウィズコロナの生活様式というのは厚生労働省が発表していますが、買い物の部分では、通販を利用してほしい、少人数で空いた時間に計画的にやってほしい、また、決済方法に関して電子マネーをどんどん使っていってほしいとか、そういったものありますね。
その他にも、サンプルなど展示物への接触を減らしたり、コンビニでも「てまえどり」と言って、奥の方から商品を取ると購入しない商品にも触ってしまうため、手前から取って購入してくれっていうので売っていますね。
山本:なるほど。
高橋:小売業としては2022年は商品原価が上がっている、ウィズコロナの生活様式も取り入れないといけない状況で、なかなか厳しいですね。
山本:小売業が厳しい理由は具体的には何ですか?
高橋:やはりこのウィズコロナの生活様式となると、なかなか人が出歩かなくなります。
また、販売価格に影響する、製造コストが上がっています。
そういった部分で売上ないし利益を出していくのが、かなり厳しくなるかと思います。
山本:では、企業の在庫の持ち方としては、オススメなど、どういったものが考えられますか?
高橋:販売方法・販売チャンネルを増やすであるとか、あとできるだけ経費をかけない・人件費をかけないようにするべきです。
今では無人店舗とかもできていますので、そこに投資できる企業様としては、いろいろ販売チャンネルを広げていかれるのがいいかと思います。
できる限り限られた在庫をいろんな販売方法で共有する、在庫を様々な販売チャネルで共有することが必要だと思いますね。
山本:やはり通販の割合が増えていくでしょうね。
高橋:そうなるとネットを活用した集客や、SNSの有効活用などが売り上げに直結しますので、ネットに力を入れていた企業はチャンスがたくさんあるのではないでしょうか。
山本:生産調整により生産の回数を増やしていき、1回のオーダー数量は減っていく。
在庫は、保有する在庫数量が減っていくが、原価は上がっていく。物価上昇につながります。
原価が上がるので、売価が上昇して、消費者であるお客様ははどんどん商品を買いにくくなっていくんじゃないかと思います。
今後、商品の生産に関して、どんなことが予想されますか?
高橋:考えられるのは、原価を下げるために、一部のメーカーの企画に複数社が乗っかるという方法もありますね。
なので、ある会社が作ったものに対して、ネーム替えだとかパッケージ替えによって、それぞれのメーカー様や小売店様が独自性を出して売っていく形ですが、商品の中身は一緒になりますね。
山本:それなら、以前の生産方法のほうが消費者には良かった、ということになりますね。
店舗があって売り場はきちんと開いている。売り場がきちんと開いているから、販売の数量が見える。販売の数量が見えるから、細かく作るのではなく、まとめてロット多く作って原価を下げる。
そうすると、仕入れ価格も下がるから、販売価格が低くても良いことになります。
高橋:そうですね。
山本:もしくは販売価格が上がらなかったとしたら、その分メーカー様の利益が圧迫されて、メーカー様の業績が悪化するということですね。
高橋:ただこの2020年2021年のコロナの問題によって我々は製造に関してだとか、そういった生産調整の部分ではかなり賢くなったと感じます。
企業や店舗が生き残れば、コロナの収束後は、かなり改善された状態になると思います。
山本:具体的に何が改善されたと感じますか?
高橋:生産調整もですが、販売方法も一気に新しい方法が開発されていっています。
新しい販売チャンネルの開発であるとか、生産調整に特化した企業がコロナ収束後も生き残るのではないでしょうか。
そういった部分で、コロナ収束後は生産調整と販売方法は、発展していると思いますね。
特に生産調整の技術の発展はそれにより余剰在庫の数量が減り、衣服ロスや食品ロスがかなり低減されると思います。
山本:在庫数量が減るのはわかりますが、在庫の売価に関してはどうなりますか?
高橋:在庫の売価は上がると予想しています。バブルが弾けてからずっとデフレだったので、ここで一気に解消されるのではないかと思います。
終わりに
時代が凄い速度で加速しており、新型コロナ明けの需要爆発を控えている中で、様々な問題から、小売り業は危機的状況に陥っています。
その中でも新しい技術・手法を開発・取り入れている企業が多数存在し、チャンスに変えようとしています。
今回の記事が小売り業様の参考になったら幸いです。
【著者紹介】 山本昌一
株式会社shoichi代表取締役
所属団体:KanFa関西ファッション連合/日本繊維機械学会/JAFIC 一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会
大学在籍中からヤフーオークションでブランド商品・アパレル等の販売などを行い オークションで仕事をする自営業の道を選ぶ。 その後在庫処分ビジネスをスタートし、20年間在庫処分の業界に身を置く。 累計4000社のあらゆる在庫処分を手掛ける。
山本昌一プロフィール>>