2020/11/14産経新聞に掲載されました
2020年11月14日 2:04 PM
アパレル在庫ビジネス活況
~売れ残りを安値販売~
アパレル産業の不振が深刻化する中、売れ残りの在庫を買い取って安値で販売するビジネスが活況を呈している。在庫販売を個人に任せるサイトも利用が急増。副業で月100万円を売り上げる人もいる。アパレル業界では、構造的に在庫をゼロにするのは難しいことが背景にある。
大手不振、 コロナで買い取り急増
「買い取り数は例年の2~3倍のペース」とアパレル在庫を扱うshoichi(大阪市)の山本昌一社長は話す。「新型コロナウイルスの感染拡大後に買い取り依頼が急増した」
今年に入ってレナウンが経営破綻したほか、ワールドやオンワードホールディングスが希望退職募集や店舗閉鎖 といったリストラに追い込まれるなど、アパレル業界は厳冬期にある。
業界各社は、例年のような規模でセールができず、在庫は膨張。その結果、倉庫の賃料が15~20%上がっているといい、「各社とも在庫の現金化を急ぐようになった」(山本社長)
shoichiは、メーカー側の要望に応じて商品のブランドを示すタグを外して大幅に値下げをするなどして、月当たり100万枚程度さばく。
個人の在庫販売も活況だ。約千社のアパレルメーカーなどが登録している在庫商品の取引サイト「スマセル」での取扱金額は、今年に入って6倍増という。
運営するウィファブリック(大阪市)によると、 販売側の会員の約8割が個人。フリーマーケットアプリや、ネット配信で実演販売のように商品紹介するライブコマースなどを活用している。「在宅勤務で時間に余裕ができたため、副業として在庫販売を始める人が増えている」という。月商100万円を超え「独立する人もいる」そうだ。
在庫ビジネス拡大の背景には、アパレル業界独特の構造がある。販売シーズン1前に予想に基づいて製造枚数を決めるのが一般的で、縫製業者から「発注を増やしてくれれば値下げする」と提案された場合、「頑張れば売れる」と見込んで増やす傾向があるという。メーカーは、そうして在庫を積んでから販売に臨む。
売れ残りはブランド価値を下げないよう、廃棄処分されることも少なくなかったとされる。しかし2018年、英高級ブランドのバーバリーが42億円相当の売れ残り商品を焼却処分していたことが発覚、批判を浴びたことをきっかけに再販売する専門業者への売却などにシフトしたとみられている。shoichiへの在庫買い取り依頼が増えだしたのもこの時期という。
今年夏以降、アパレル業界では商品を絞り込み発注を減らす動きがあるという。ただ「構造上 、在庫も売れ残りもゼロにできない」とされ、在庫ビジネスは当面重宝されそうだ。
(粂博之)
【著者紹介】 山本昌一
株式会社shoichi代表取締役
所属団体:KanFa関西ファッション連合/日本繊維機械学会/JAFIC 一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会
大学在籍中からヤフーオークションでブランド商品・アパレル等の販売などを行い オークションで仕事をする自営業の道を選ぶ。 その後在庫処分ビジネスをスタートし、20年間在庫処分の業界に身を置く。 累計4000社のあらゆる在庫処分を手掛ける。
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