不良在庫に魂を与え、売り切る。 多様な販路開拓でサポート
2017年1月07日 12:18 AM
アパレル商品を軸とした在庫処分業に携わって10年ほどになります。いわゆるバッタ屋です。私は20歳でネットオークションの会社を起業し、その後、海外ブランドの在庫処分業の方と出会って「一生続けたい仕事」と思い、詳しいことは知らずにこの商売を始めました。思い立ったらすぐに行動する性格なので、失敗もたくさんしました。でも、ユニクロの柳井正さんが本に書いていましたが、早く失敗すれば早く改善できると思うのです。
この業界は高齢の人が大半で、アパレル企業で働いた後に独立してメーカーとなり、その在庫を処分する過程で他社の在庫も扱うようになる方が多いようです。企業規模は小さいのですが、業界や商品に関する知識も資金も人脈もあるので、同じことをしても勝負になりません。バッタ屋は一般に、在庫を一括して引き取って市場に卸す、つまり転売で処分しています。そのため、ディスカウントされるのが一般的です。それでも売れなければ、最終的には燃やされるということを、この商売を始めた頃に知りました。商品は欲しい人のもとへ渡って初めて生きてくるのですから、その橋渡しをしたいと強く思ったのです。その思いと経験から、「法人専門の在庫処分代行業」を発想しました。
当社が既存の在庫処分業者と違うのは、メーカーから在庫を買い取るか委託で預かって、小売店や問屋、仲間卸、ネットショップなどで販売していただく、あるいは当社のサイトや直営店で販売するという仕組みです。販路を幅広く、多様に持っていることが強みです。売るときにも手間をかけます。1点1点の在庫を分析して、売れる可能性の高い販路に仕分けていく。商品としての見せ方も工夫します。モデル撮影をしたり、他ブランドや当社のオリジナルブランドとコーディネートで提案したり。仕入先に迷惑をかけないよう配慮しながら、買う人の視点で在庫を魅力化する戦略を立て、実行していきます。
在庫に魂を与え、付加価値を高めて輝かせることによって、売り切るのです。価格も、できるだけ高く売れる単価をスピーディーに査定します。速い対応は仕入先にとって安心感となり、また同業他社と同じ提示価格になった場合も当社を選んでいただけることにつながります。仕入先には、在庫処分の依頼時にはとくに資料など作らなくてもかまいませんと言っています。その時間を次の物づくりなど本業に使っていただきたいからです。
もう一つ、既存の在庫処分業者にはない機能を持っています。自前の倉庫・物流です。私たちは段ボール1箱の在庫でも請け負いますが、大量の依頼が多いため、仕入れる商品は月間で10万点に上ります。この膨大な仕分けを自前の倉庫とスタッフで行うからこそ、値付けも販路探しも速いのです。確かに固定費はかかりますが、リスクを負ってでも自分たちで仕分けしたほうが、売れるのも速いんですね。ただ、人の力でやっているので、大変な作業でもあります。機械化できることはするなど、徹底して効率化したうえで人の力を生かすことに注力しています。本業の精度を上げるということです。
このようなことに取り組むのは、スタッフみんなが当社のビジネスを担えるようになってほしいと思うからでもあります。在庫処分業は経営者の目利きと経験に依るところが大きく、一代で終わってしまうことが多いんですね。ビジネスを継続していくためにも、仕組み化や組織のあり方を考えることが必要です。今後はアパレル分野の在庫処分業を磨き、シェア拡大を目指します。他分野の在庫も扱っていますが、アパレル分野でトップの存在価値を確立することが優先課題と考えています。
Profile/やまもと・しょういち
1978年生まれ。鳥取大学卒業。在学中に20歳でオンラインによる通販やオークションの会社を起業。
リサイクルアパレルブランドのネット通販に10年間携わり、2004年、アパレルに特化した在庫処分サービスを開始。
2005年、「Shoichi」設立。
2008年、キャリア女性向けのオンラインショップ「LOVE FASHION OUTLET」開店。
2009年、オリジナルブランド「MARTHA」発売。
【著者紹介】 山本昌一
株式会社shoichi代表取締役
所属団体:KanFa関西ファッション連合/日本繊維機械学会/JAFIC 一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会
大学在籍中からヤフーオークションでブランド商品・アパレル等の販売などを行い オークションで仕事をする自営業の道を選ぶ。 その後在庫処分ビジネスをスタートし、20年間在庫処分の業界に身を置く。 累計4000社のあらゆる在庫処分を手掛ける。
山本昌一プロフィール>>