アパレル業界に激震!フランスの衣服廃棄禁止令が施行。日本のアパレル業界の現状、課題、進むべき道とは?
2022年1月25日 5:09 PM
2022年1月からフランスで施行された世界初の「衣服廃棄禁止令」。
❝売れ残った新品の衣類を、企業が焼却や埋め立てによって廃棄することを禁止するという内容だ。
禁止令は、2020年2月に公布された循環経済に関する法律(loi anti-gaspillage pour une économie circulaire)で定められたもの。同法は、脱プラスチックや、廃棄される製品の再利用を促し、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会構造を是正することを目的に制定された。
その中で衣類や家電については2022年1月から、売れ残り品をリサイクルや寄付によって処理することを義務付ける。食品以外の在庫廃棄の規制に踏み切った法律は世界初。脱炭素化の潮流が世界的に加速する中、今回の規制について日本のアパレル企業も他人事ではいられない。❞
引用:東洋経済『世界初の「衣服廃棄禁止令」がアパレルに迫る変革』
今回は、同法により日本国内に与える影響と今後の流れを予測した弊社代表と営業部長の対談を行いました。
小売業の方の参考になればと思います。
―世界初の「衣服廃棄禁止令」
弊社代表山本:2022年1月フランスで、売れ残った新品の衣類を、企業が焼却や埋め立てによって廃棄することを禁止するという法律が施行されました。
これは、非常に大きな動きかと思います。
フランスでは、2020年2月に『循環経済法』が施行されています。
廃棄物を減らし循環経済を目指す法律ですね。
今回の衣類廃棄禁止はその法律で計画されていて、その他でも靴、化粧品、本、家電などにおける売れ残り製品の焼却・埋立は原則禁止です。
計画では、2030年までに「住民1人当たりの家庭廃棄物を15%、経済活動による廃棄物を5%削減」を目標とするなど、企業だけでなく消費者への規制も含まれます。
参考:ジェトロ『循環経済法が2月に施行、循環経済型社会へ大きな一歩(フランス)』
衣類や家電については、売れ残り品をリサイクルや寄付によって処理することを義務付ける。
つまり、在庫処分の次の動きですね。
在庫処分した後で、さらに売れ残った物、もしくは在庫処分せずに売れ残った物を在庫処分サービスを利用しない場合は、リサイクルや寄付をするしかないということになりますね。
―食品廃棄禁止法が6年前に施行
山本:フランスのこの法律の前に何があったかというと、『食品廃棄禁止法』、2016年の2月に施行されました。
消費可能な売れ残りの食品を廃棄することが禁止され、違反の場合は罰金が科せられています。
その他ではイタリア・イギリスの売れ残りの食品の寄付の促進が進められました。
参考:ジェトロ『食品廃棄物削減に向けた政策とスタートアップの動向』
―産業廃棄物業者の仕事は激減するのでは・・・
高橋:今回の『衣服廃棄禁止令』、すなわち『循環経済法』。
これが今フランスで起こっていますが、今後世界的にもこういった流れになると考えられます。
日本で考えたら、まず産業廃棄物業者の仕事がかなり減りますね。
山本:(産廃業者の仕事は)2~30%は減少するのではないでしょうか。
―日本の企業より外資の企業が廃棄量は圧倒的に多い!
山本:衣料品で廃棄をしている企業、どんどん廃棄をしてる企業というのは国内では減少しています。
shoichiみたいな在庫処分を行う企業に余剰品販売してくれるようになってきていますが、やっぱり大企業が多いですよね。
高橋:ブランド毀損を防ぐために在庫処分を選択されますが、在庫処分をするにはコストがかかり、財産である在庫を償却するので、やはり体力のある大企業さんが多いですね。
山本:あと、日本の企業よりもやっぱり外資の企業の廃棄処分がすごく多いです。
やっぱり外資だと、決裁者も日本にいない、ハンドリングが取りにくい。
在庫どうするって聞かれたら、廃棄処分にってなることが多いですよね。
本国からしたら日本はどういう国か、よくわからない。「足立区に捨てます」と報告しても、足立区ってどんなとこかなんてわかりませんからね。
―今後求められるのは安全な在庫処分。選ばれる業者は?
山本:今後、こういう法律が日本でもできて、廃棄を禁じられたらどうなりますか。
高橋:禁じられたらまず、企業としては安全な在庫処分が必要ですね。
山本:廃棄の前段階である、在庫処分ですよね。
高橋:廃棄処分の前となると、セールを経て売れ残ってしまった商品を、倉庫に戻す。
戻して在庫を溜めて廃棄、というのが今までの流れですが、セールが終わった後にすぐ在庫処分をする流れになる。
その際に、安全な在庫処分、ブランド毀損を起こさず、商品の行き先・再販先がはっきりした在庫処分っていうのを企業さんは求められると思います。
―海外に寄付するコストは?
山本:このフランスの法律だったら、最後に残った在庫は寄付かリサイクルする話ですが。
どうしても日本国内や、マーケットで流通させたくなければ、寄付という選択肢はあるかと思います。
高橋:ですが、その寄付というのも、日本国内で流通させたくないから行います。
つまり、海外への寄付が選択されると。
山本:海外に寄付するのは、やっぱり大変です。送料・関税・輸出の手間はすごくかかります。
ただ、国内、マーケットに影響を与えない、という点では海外での寄付はメリットがあることになりますね。
高橋:海外への寄付は、メリットはありますが、自社でそのまま寄付しようとすると、送料がかかりますし、なによりパッキングリストの作成が大変です。
中身がこの箱に何が何枚入ってて何グラムあって、という細かい書類を作る必要があり、非常に人件費がかかってしまいます。
まず、海外出荷の際に必要な資料ですが、
①商品の写真
②組成ニット、カット、ウーブン(布帛)
③混率
これを一箱一箱番号をつけて用意する。
そして、一箱一箱重さを測って資料にする。
同じものを一箱に入れるとまだマシですが、バラバラだと一箱あたり20分くらいはかかります。
コンテナで輸出となると、送料を抑えるため、300箱から500箱くらいを一度に送らないとコストが合いません。
山本:つまり、コストが上がってしまうので、現実的では無いということですね。
―海外で販売する難易度は?
山本:マーケットに影響を与えないという点では、海外で販売するのはどうですか?
高橋:海外で販売するということは自分のブランドを海外に出店するのではなく、卸売ですよね。
そうなると、海外の取り扱い業者に依頼することになりますが、そのルートを探すのにすごく手間がかかります。
山本:信頼できる卸売りのルートを見つけるのはとても大変ですよね。
―リサイクルのメリット・デメリット
山本:もう一つあるとしたら、一番環境にいいのは、反毛とか、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルと言われるリサイクルなんですけども、メリットとしては当然環境に一番良いですね。
最もやるべきですが、デメリットとしてはどうでしょうか。
高橋:デメリットとしては、素材別に仕分けないといけない。これが大変手間がかかります。
実は反毛って、例えばウール100%の素材なら、服をそのまま出してまえば反毛されると思いがちなんですけど、まず襟ネームをカットしないといけません。
ワンポイントがあったら、そこの部分の刺繍とかも取っていかないといけない。
素材が違いますからね。
山本:手間がかかりますね。
素材が固まってる、例えば倉庫に同じコットン100%のTシャツが固まっている、それならまだいい。
特に中古衣料みたいなバラバラの素材の服を仕分けしリサイクルっていうのは、人件費がかかりすぎるのでコストが合わないですね。
弊社でもリサイクルウールを作っていますが、生産コストがかかるため、どうしても販売価格が上がってしまう。
新品の製品のほうがリサイクル品より安いため、消費者はそちらを選びがちになっていますね。
―アウトレット・オフプライスストアのメリット・デメリット
山本:企業としては、プロパー販売・セール販売と在庫処分の間、つまりアウトレット・オフプライスストア販売というのが選択肢に出てくると思いますが、この辺りはどうでしょうか?
高橋:メリットとしては、できる限り高く商品を売ることができます。
デメリットは、オフプライスストア、アウトレットパークは小売店舗なので地代など販管費が高くなります。
販管費が高いので、そういった部分でペイできるのか、という問題が出てきます。
また1社だけ1ブランドだけで、こういったショップを運営することは、結構厳しいんですよね。
結局、売れ残り商品をそこで売るので、お店としての魅力が乏しい。
そうなると、利益を出すためにそのショップで販売するための商品を新しく作るという、本末転倒の動きに行き着いてしまいます。
売れ残りの在庫品を販売するために商品を作り、新しく在庫を増やしてしまう。
山本:小売の販管費は高いですからね。
高く販売はできますが、黒字に持っていけるかといえば、難しいですね。
ただ、ディスカウントやアウトレットは、販売規制をきちんと設けることでブランド毀損は起こりにくいです。
高橋:販売する場所をきちんと絞るなら、ブランド毀損は防げますね。
―ブランド毀損を起こさない在庫処分は?
山本:shoichiがやっているブランド毀損が起こりにくい在庫処分の方法について話してみましょうか。
まず、天然素材は反毛に回す。
デザイン商品、ポイントが入ってるもの、素材の仕分けにコストがかかる商品はウエスにする。
海外に売っていい商品は海外に卸売・小売を行う。
シンプルな商品、見ただけではブランドがわからない商品は、タグをカットして国内で再販売。
あとは、商品を買取から輸出まで一括でやるというのを、我々得意としておりますので、こういう法律が施行されてもshoichiに任せてもらえれば安心かと思います。
高橋:以前だったら、廃棄処分を行っていた商品をshoichiにそのままお渡しいただけたら、細かく仕分けしてクライアント様の望まれる形での処分は可能ですね。
―「衣服廃棄禁止令」について思うこと
山本:この法律は思い切った法律と言うか、意識が高すぎる法律、と感じました。
高橋:意識が高い法律ですが、地球環境は全世界の人間の共有財産なので、一部の人間が汚すというのは、バランスが悪いですね。
確かにフランスは先んじていますが、SDGsの推進など世界的な流れの一つだと思います。
弊社でもSDGsの取り組みに力を入れています。
関連リンク:在庫処分でSDGs
ただ、この法律が出てくると、今後はちょっと奇抜な服は作らないでおこう、となりそうですよね。
アパレルに限らず、売れ残ることを恐れて、商品開発が保守的になるというか。
山本:ファッションを愛する我々としては、どんな服でも活かしていけるようにしたいですね。
もちろん、shoichiは国内在庫の廃棄のゼロを目指していますので、どんな商品でも活用できるよう、さらに販売チャネルを広げていきたいと思います。
【著者紹介】 山本昌一
株式会社shoichi代表取締役
所属団体:KanFa関西ファッション連合/日本繊維機械学会/JAFIC 一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会
大学在籍中からヤフーオークションでブランド商品・アパレル等の販売などを行い オークションで仕事をする自営業の道を選ぶ。 その後在庫処分ビジネスをスタートし、20年間在庫処分の業界に身を置く。 累計4000社のあらゆる在庫処分を手掛ける。
山本昌一プロフィール>>