販売革新4月号に掲載されました
2020年4月13日 3:49 PM
過剰供給で値引き販売が常態化し過半が売れ残るわが国のアパレル流通だが、大差ない状況の米国ではオフプライスストア(OPS)が急成長してフルプライス販売の百貨店を凌駕し、ブランド販売の主役となっている。
わが国のOPSはまだ黎明期でフルプライス流通を脅かすには違いが、昨年4月に1号店を解説したゲオの「ラック・ラック クリアランス マーケット」も、9月に1号店を開設したワールドなどの「アンドブリッジ」も手応えを得て多店化に移り、3月24日にはドン・キホーテも「オフプラ」の1号店(960㎡)を名古屋郊外のMEGAドン・キホーテUNY大口店内に開設して多店化をもくろんでいるから、遠からず米国と似たような状況になるのではなかろうか。
(中略)
年間約1000万着を取り扱う在庫処分業者
小売店は『カラーズ』で国内外に展開
年間約1000万着を取り扱い、メーカー、ブランド、小売店など年間約200者と取引、大阪府と三重県に4つの倉庫を持ち、常時100万着を在庫する業界トップクラスの衣料品在庫処分事業を展開するのがshoichiだ。
2019年5月期の売上高はグループ合計で16億円(前期比15%増)、経常利益は1000万円。売上に占める販路別の構成比はインターネット販売と小売事業がそれぞれ約2割で、卸売りが約6割を占めている。
代表山本は大学在学中からヤフーオークションに出品し、ブランド物の古着を販売していたが、ある人との出会いで在庫処分の世界を知り、04年からインポートブランドを中心に法人在庫の処分サービスを開始した。06年には30代~50代女性に向けたEC(電子商取引)ショップ『ラブファッションアウトレット』をビッダーズとYahoo!ショッピングに開設。その後、国内ブランドの取り扱いも増加し、08年には楽天市場にも出店した。
09年にワンピースブランド『マーサ』を立ち上げ、自社商品の展開も始めた。12年にはタオバオ上で中国越境ECをスタートしている。
『カラーズ』名で国内に9店 毎週水曜日に一斉に値下げ
14年からは小売店の展開を関西で始め、いわゆるオフプライスストア(OPS)事業に進出した。その翌年売上は10億円を突破。16年には大阪市西成区に300坪の自社物流倉庫を取得。17年には大阪・船場で『shoichi卸問屋』を出店した。
ピーク時には8店まで拡大した小売店は人材や運営面でうまくいかず、いったん撤退。事業を立て直し、18年1月に東京にも進出するなど再起を期した結果、現在では『カラーズ』の店名で大阪4点(北千里、吹田、岸和田、九条)、東京3店(阿佐ヶ谷、新小岩、丸井錦糸町)、神奈川(元住吉)、福岡(天神コア)各1店と、出店再開からわずか2年で国内に9店を展開するまでになった。
『カラーズ』は商店街や商業施設など人が集まる立地に出店。居抜き出店が基本となるため店舗面積はそれぞれ異なるが25坪を標準に展開している。
店づくりは白を基調としたシンプルなつくり。商品陳列はハンガー展開が主体で、フィッティングルームも備え、レジカウンターも簡素なつくりで気軽に来店できるカジュアルな雰囲気を醸し出している。
店内には「オール新品・未使用品」というPOPが掲示され、なぜ安いかという理由も説明。「新入荷」「超得」といった表示でお客の購買意欲を促す。
ターゲットは30代~50代の女性。商品構成は店ごとの売れ行きを見ながらミセスかヤングかどちらを中心にするかを決めていく。レディスウエアをメインに、インナーやシューズ、時計、バッグ、服飾雑貨などを取り扱う。
商品は店の立地や商圏を考慮しながら本部から送り込み(一部商品除く)、品番別の在庫管理はしていない。そのため商品に付けるプライスタグを入荷のタイミングにより色分けし、1000円、800円、500円、300円、100円と毎週水曜日にマークダウンして、店で売り切るシステムを取っている。だから、価格を変更する水曜日が一番来店者数が多い。
6月からFC展開をスタート マレーシアなど海外にも店舗
初期投資は25坪の標準店で工事費が250万円程度。1日の来店者数は約200人で3人に1人は商品を購入するという。平均客単価は1200円。1店当たりの月商は200万~400万円で年間3000万円を販売する。
家賃が売上に占める割合は20%前後と意外に高いが「人件費を20%以下に抑えられれば必ず勝てる」(山本)。仕入れは基本的に定価の10%前後で買い入れ、定価の20~30%を中心に販売する。店はスーパーバイザーが巡回し、1店当たりパート・アルバイトが常時1~2人、頭数7人程度で運営している。
「今後は3年以内に30店を目標に店舗網を拡大したい」と山本。出店スピードを加速するため委託(売上げ仕入れ)取引でフランチャイズチェーン(FC)展開も始める。6月には滋賀県の大津市の近隣型ショッピングセンター(SC)に1号店をオープンする予定だ。その次の段階では100坪の大型店にもチャレンジしたいという。
FC1号店のオーナーは不動産業。「雑貨など異業種の店が痛く取引で『カラーズ』のコーナー展開をしてもいい。靴の専門店では商談が進んでいる。そういう形で販路も広げていきたい」と山本は語る。
国内で事業を拡大する一方で、海外でも店舗を展開。在庫処分品を海外だけなら売ってもいいという取引先が存在し、エージェントを通じて輸出していたが、直接店舗を設けて事業展開を始めた。「個人的にカンボジアでボランティア活動をしていたので、収益の一部を寄付するなどして貢献したいという気持ちも強かった」(山本)
『カラーズ』の海外展開は18年11月からスタート。マレーシアの三井アウトレットパーク クアラルンプール国際空港 セパンに19年夏までの期間限定で出店。初月から黒字と好調だったため、クアラルンプールのそごうと伊勢丹、ジョホールバルのそごうへと店舗を拡大。昨年9月にはクアラルンプールのローカルモールに店を開いた。
現在はマレーシアで4店を展開。カンボジアでも昨年8月にプノンペンの商業ビルに3号店を出店したが、他の2店を閉め、1店となっている。
ECにおける販売も強化 「眠れる在庫に魂を」
ECでの販路拡大にも力を入れている。30代~50代の女性に向けたエレガンスラインのネット通販サイト『ラブファッションアウトレット』をはじめ、今年1月には『カラーズWEB本店』を開設、カラーズ店舗で販売中の商品をウェブでも購入できるようになった。
また18年7月にはオンラインECショップ『アパレル卸問屋.com』を設け、ブランド品を1円で提供するなど、メルカリやヤフオクで転売する副業ユーザーをサポートしている。
アパレルブランドの在庫商品を仕入れて販売する在宅で手軽にできる副業ビジネスは、子育て世代に女性などに人気で、セミナー開催や個別の相談にも応じている。
こうして新たな販路を開拓する一方で、取扱商品を拡大することにも力を入れている。
アパレルではレディスだけではなく、メンズ、キッズにも広げ、生活雑貨、家電、食品といった分野にも進出し、生地の取り扱いも視野に入れている。
在庫処分する側にとってはブランド毀損などさまざまな懸念と問題を抱えている。shoichiでは取引先の秘密を保持しながら販路を明確にすることで、ブランド側の不安を解消し安心を担保、さらにできるだけ高く、手間なく、コストを低くし、手早く買い取ることで取引先のニーズに的確に対応するようにしている。
また、案件によってチームでの対応を行うようにし、複数の在庫処分コンサルタントで検討することで、最善の解決策を見つけることを目指している。
「眠れる在庫に魂を与え、再び輝くステージを与えます」というスローガンを掲げて、在庫処分ビジネスの草分けとして、長年事業を展開してきたショーイチ。
在庫処分にはどこに流れるか分からないなどさまざまなリスクもある。同社は在庫に関する従来の様々な処分方法を検討しながら、同社独自の在庫処分方法も織り交ぜて提案することで、多くの企業を顧客としてきた。
「在庫で悩んでいる企業は本当に多く、行き場のなくなった不良在庫・滞留在庫は膨大な量に上る。一生懸命作られた商品が売れ残ったという理由だけで、一度も光を当ててもらえす段ボールのまま売られていくのはあまりにも悲しく、寂しく、そしてもったいない。在庫に再び光を当て、在庫を使っていただけるお客様への橋渡しをしていきたいと考えている」(山本)
ショーイチは在庫処分という社会にとって必要不可欠な静脈ビジネスで、今後もこうした思いを大切にして、また新たな取組にも挑戦していこうとしている。
【著者紹介】 山本昌一
株式会社shoichi代表取締役
所属団体:KanFa関西ファッション連合/日本繊維機械学会/JAFIC 一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会
大学在籍中からヤフーオークションでブランド商品・アパレル等の販売などを行い オークションで仕事をする自営業の道を選ぶ。 その後在庫処分ビジネスをスタートし、20年間在庫処分の業界に身を置く。 累計4000社のあらゆる在庫処分を手掛ける。
山本昌一プロフィール>>