【書籍】誰がアパレルを殺すのか

【書籍】 誰がアパレルを殺すのか

に弊社倉庫写真。代表山本のインタビューが掲載されております。

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一部ご紹介させていただきます。

 

国内の衣料品(アパレル)業界がかつてない不振にあえいでいる。
その危機的な状況は業界内に留まらず、報道などを通じて、広く世界に知れ渡るようになった。
苦境を端的に示すのは、数字だろう。

オンワードホールディングス、ワールド、TSIホールディングス(サンエー・インターナショナルと東京スタイルの統合によって2011年に発足)、
三陽商会という、業界を代表する大手アパレル4社の2015年度の合計売上高は約8000億円。
2014年度の約8700億円と比べて、1割近く減少している。
2016年度も引き続き1割程度減る見込みだ。

さらに4社を合計した2015年度の純利益に至っては、2014年度と比べてほぼ半減。
そのうえ2016年度は、三陽商会が大幅赤字を計上したことによって、4社合計の純利益はさらに減少する。

店舗の閉鎖やブランドの撤退も相次いでいる。
2015~2016年度に、大手4社が閉店を決めた店舗数は実に1600位上。
ワールド、TSI,三陽商会は希望退職も募っており、その総数は1200人を上回った。
例年売上高が1割ずる減少し、純利益も急降下する。
アパレルを扱う売り場やブランド、そこで働く人々が次々と姿を消しているのだ。
影響は業界内に留まらない。

大手アパレル企業と二人三脚で成長してきた百貨店も、主力商品としてきたアパレルの不振によって、構造改革を迫られている。
2016年には、地方や郊外を中心に、百貨店の閉鎖が続いた。
訪日外国人の“爆買い”特需で覆い隠されていた不振が表面化し、いよいよ不採算店舗を維持できなくなってきたのだ。

百貨店業界全体の売上高はマイナスになっている(2017年3月22日時点)。
中でも最大手の三越伊勢丹ホールディングスは、2017年以降も店舗の構造改革を進める方針を示しており、今後も店舗閉鎖や売り場の縮小が続く可能性は高い。

なぜ「今」なのか

ここで、一つの疑問が湧いてくる。1990年代前半のバブル崩壊や、2008年のリーマンショック直後ならまだしも、
アベノミクスが一定の成果を上げ、マクロ経済が比較的安定している中で、なぜアパレル業界だけが今になって突如、深刻な不振に見舞われているのか。
原因を突き止めたいという思いで取材を進め、日経ビジネス2016年10月3日号で特集「買いたい服がない」を掲載した。
特集では、生地や糸の生産をする「川上」から、商品を企画するアパレル企業やアパレル商社などの「川中」、そして消費者に洋服を届ける百貨店や
ショッピングセンター(SC)などの「川下」まで、アパレル産業に携わる幅広い関係者に取材をした。

アパレル産業には、深刻な「分断」がある。
分業体制が進みすぎた結果、例えば「川上」で生地を生産している企業は、「川下」の小売店で何が起こっているのか、ほとんど把握していない。

逆もまた然りだ。
川上から川下まで貫く問題の本質を正しく認識しない限り、解決の糸口を見つけることはできない。
そのすべてを取材して見えてきたのが、業界全体に蔓延する「思考停止」だった。
多くの関係者が、過去の成功体験から抜けきれずに目先の利益にとらわれ、年々先細りして競争力を失っていた。

1970年代、日本のアパレル業界は黄金時代を迎えた。
この時期には、洋服は作れば作るだけ売れた。日本人デザイナーがパリコレクションなどに華々しくデビューし、社会的な称賛も浴びた。
だがこの時に生まれた利益を事業の進化のために再投資することはなく、新たなイノベーションが生まれることはほとんどなかった。
業界の歴史に詳しいウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション(WEF)の尾原蓉子会長は、この黄金期の1970年代を、
「失われた10年間でもあった」と位置付ける。

日経ビジネスの特集では、衰退の原因となった古くから続く非効率な業界慣習や、市場変化への対応の遅れについて、
一つ一つ取材しながら、アパレル業界の不振の構図を描いた。
本書は、その特集記事を大幅に加筆・修正したものだ。
特集掲載後には、驚くほど多くの反響があった。

そしてその後も、アパレル業界はより大きく音を立てて崩れていった。
例えばアパレル企業大手の三陽商会は、英バーバリーのライセンス契約が切れた後の業績悪化に歯止めがかからず、
2016年12月に当時の社長、杉浦昌彦氏が引責辞任することになった。

続く2017年3月には、三越伊勢丹ホールディングスの社長だった大西洋氏も、退任に追い込まれた。
百貨店改革の主導者が退く一つのきっかけとなったのは、地方店や郊外店のリストラを巡る問題だった。
5年後、10年後に振り返った時、アパレル業界の現在の動きは、大きなターニングポイントとなるはずである。
そうした問題意識で取材を重ねてきた。

本書では、衰退する従来型のアパレル企業を取り上げる一方で、将来を担うであろう新興企業の取り組みについても、大きく紙幅を割いた。
大手アパレル4社は大手百貨店は売り上げが大きく、携わる関係者も多い。
そのため彼らの不振は、一見すれば、アパレル業界そのものの不振のように映るかもしれない。
「かつてほど、消費者はファッションに興味がない」
「今の若い世代は、スマホやSNS(交流サイト)など、アパレル以外に時間とお金を割いている」ー。
アパレル産業そのものに未来がないような論調もある。

だが実際には、こうした企業の衰退を尻目に、着々と売り上げを伸ばす新興勢力も登場している。
日本のアパレル企業に頼れないと判断した「川上」の縫製工場や生地メーカーの中には、培った技術力の高さを、
欧米の高級ブランドに売り込み、成功を収めているところもある。
彼らにとって業界不振論はどこ吹く風だ。

共通しているのは、従来のアパレル企業の轍を踏まぬよう、問題を分析した上で、現実のビジネスに活かしている点だ。
一つの象徴的な存在が、本書の第四書で取り上げている新興セレクトショップ、TOKYO BASE(トウキョウベース)の谷正人CEO(最高経営責任者)だろう。
彼は、バブル崩壊の影響で倒産した地方の老舗百貨店の家系に育ち、従来型ビジネスモデルの限界を実感した。
その経営手法については是非、本書を読み進めてもらいたいが。同社は2017年2月、マザーズから東証一部に市場変更し、
時価総額は既に三陽商会を上回っている。
思考停止に陥らず、アパレル業界の失敗を糧に次のチャンスをつかんだ。

アパレル産業は、死んでいない

『誰がアパレルを殺すのか』。
本書のタイトルが示すように、アパレル産業を衰退させた“犯人”を探すべく取材を重ねた結果を、第1章にまとめた。
サプライチェーンをくまなく取材し、「川上」「川中」「川下」のそれぞれで、従来型のアパレル産業に携わる企業が“内輪の論理”
にとらわれ、目前に迫る現実を受け入れようとしない状況をあぶり出した。
第2章では、戦後のアパレル産業の勃興から黄金期までの歩みをまとめた。
なぜアパレル産業に携わる人々の多くが思考停止に陥ったのか。

歴史をひも解けば、そこには輝かしい時代があった。
戦後の高度経済成長で日本人の消費文化が花開く中、ファッションの豊かさを象徴する最も分かりやすいアイテムとして、脚光を浴びた。
古くは百貨店に並んだ海外ブランドのライセンス既製服に始まり、日本人デザイナーのパリコレデビューやDC(デザイナーズ&キャラクターズ)
ブランドブームといったまぶしい黄金期が、アパレル産業に携わる多くの人々を甘やかし、結果的に思考停止に至る背景となった。
第3章では、業界の「外」からアパレル産業に参入する新興企業について取り上げた。
彼らは既存のアパレル業界とは全く異なるIT(情報技術)を武器に、年々、その存在感を高めている。
彼らには、過去の輝かしい黄金時代も、業界の“内輪の論理”もない。
それゆえに、既存のルールに縛られることなく、自由な発想で魅力的なサービスを次々と生み出し、軌道に乗せている。
アパレルは「新品を買う」ものであるという従来型の価値観さえ軽やかに否定する姿から、学ぶべき点は多い。
第4章では、業界の「中」から既存のルールを壊そうとする新興企業の取り組みを追った。
先に触れたトウキョウベースの谷氏に大きな影響を与えたのは、生家である老舗百貨店の破綻である。
ほかにも内向き志向を脱し軽々と海を超えたジーンズメーカーや、大量生産と決別したデザイナーズブランドなどを取り上げた。
古くからの慣習を知る“内側”のプレイヤーであっても、壁は壊せるということを証明する好例だ。
第3章、第4章で紹介する企業の取り組みを追えば、「衰退した」と言われるアパレル産業に芽吹く新たな可能性が見えてくるはずだ。
古い慣習や成功体験にとらわれた従来型の思考。売り上げの減少を恐れ、いつまでも現状維持に固執する経営層。
消費者不在の商品企画や事業展開ー。
アパレル産業を衰退へ導いた病巣は、何も彼らの業界特有の問題ではない。
同じような構図は、ほかの産業にもある。
そして、こうした課題を乗り越えようとする挑戦者が登場し、大きなうねりの中で、産業そのものが生まれ変わる様子も、また同じといえるだろう。
「アパレル産業に未来はないのか」。そう問われれば、迷わず「NO」と答える。
業界の不振の構造を把握し、山積する課題を乗り越えれば、そこには確実に、次の成長につながるチャンスがあるからだ。
現在アパレル業界に携わる人々や、これからアパレル業界で働こうとする人々、そして洋服や消費に関心を寄せるすべての人に、
そう伝えたいと強く願い、筆を進めてきた。
どうか悲観せずに、最後まで読んでもらいたい。

アパレルの墓場に見た業界の病巣

「納品、99箱です。確認お願いします」
2017年1月下旬、大阪市西成区にある、体育館ほどの大きさの3階建ての倉庫前に、1台のトラックが到着した。
運転手が荷台の扉を開けると、出てきたのは大型ダンボール箱の山。

出迎えた2人の作業員が慣れた手つきでそれらをプラスチック製の箱に積み上げ、フォークリフトで倉庫内部へと運んでいく。
荷受けスペースには暖房がなく、作業員の息が白い。
最後の段ボール箱が倉庫内に入ったのを見届け、納品数の確認を終えたトラックの運転手は、すぐにその場を後にした。
作業が始まってからわずか30分ほどの出来事だった。
運び込まれた段ボール箱の中身は、スカートやシャツ、ジーンズにワンピースなど、大半が衣料品(アパレル)だ。
段ボール箱の隙間を縫うようにして歩くと、大手アパレル企業の商品や若者に人気の有名ブランドの洋服が、無造作に積み上げられているのが目に付く。
底冷えする倉庫内では、若い作業員が山積みになった段ボール箱を手際よく仕分けている。
窓から入るわずかな日の光が、倉庫内に漂うほこりを際立たせ、ブランド名の書かれた段ボール箱が、まるで墓標のように倉庫一面を埋め尽くす。

ここは、アパレルの墓場だ。

「バッタ屋が繁盛するワケ」

「週に3~4回はこの量が届きますね。商品はアパレル企業や有名ブランドだけではなく、卸売業者や小売店からも買い取っています。
つまり、アパレル産業の川上から川下まで、全部が取引先ですわ。」

倉庫の持ち主である在庫処分業者「shoichi(ショーイチ)」の山本昌一CEO(最高経営責任者)は、威勢のいい関西弁でそう話す。
山本氏のような在庫処分業者は通称「バッタ屋」と呼ばれる。
アパレル企業や小売店が持て余した不良在庫を、定価と比べて大幅な安値で買い取り、全国各地の小売店に転売したり、
自らインターネット通販に出したりして差益を稼いでいる。
「買い取りの値段は、一点辺り数百円が相場ですね。数百点とかまとまった数があったり、売りやすい有名ブランドだったりしたら、もう少し高くしますけど」(山本氏)。

なぜ、こうした商売が成り立つのか。

その理由を明かす前に、アパレル産業の概要を説明しておこう。
洋服を作り、それが消費者に届くまでの流れを、「サプライチェーン」と呼ぶ。
アパレル企業が直接、または商社やOEM(相手先ブランドによる生産)メーカーなどを経由して工場に洋服を作るよう指示し、
完成した洋服はアパレル企業が専門店に卸す、もしくは百貨店や直営店などを通じて消費者に販売する、というのが簡単な流れだ。
川上(糸や生地メーカー、縫製工場)から川中(アパレル企業や商社)へと洋服が移動していく中で、必ず不良在庫が生まれる。
工場がアパレル企業の需要を見込んで作った洋服が予想よりも売れずに余ったり、セールで売れきれなかったりした商品が不良在庫となる。
アパレルは生鮮食品と違って腐ることはないが、季節性や流行に左右されるため、在庫として寝かせる時間が長いほど、どんどん売りにくくなっていく。

定価で売れなかった商品はまず店舗内でのセール、次に店舗とは別の場所で顧客向けに実施されるファミリーセール、そして各地のアウトレットモールなどと、値段を下げながら場所を変えて販売され続ける。
それでも売れ残った商品が、バッタ屋の倉庫に運ばれる。
ここ数年、山本氏に在庫を買い取ってもらっている業者は「買い取りの値段が安いから、正直なところ在庫処分業者は使いたくない、
自社で在庫評価していた金額と、買取価格との差が損失として確定してしまうので。
でも、在庫を保管しておくだけでもコストがかかるし、残しておいたらいずれどこかで売れる、という保証もない。痛し痒しだ。」と苦笑いする

作った商品が見込みほど売れず、不良在庫が発生してセールの回るのはほかの業界でも珍しくはない。
ただ、アパレル業界がほかと違うのは、大量の売れ残りを前提に価格を設定し、ムダな商品を作りすぎているという点だ。
消費者のニーズを真剣に考えず、数を撃てば当たるとばかりに大量の商品を作る様子は、「散弾銃を色々な方向に振り回しながら撃っているようだ」(ユニクロなどを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長)。

我々は「必要悪」なんだ

こうした業界の実態を、経済産業省が2016年に公表した「アパレル・サプライチェーン研究会報告書」はデータで裏付ける。
報告書によると、国内アパレルの市場規模は1991年に約15・3兆円あったが、2013年には約10・5兆円に縮小した。
ここ数年は訪日外国人による“爆買い”特需が底上げしていると見られ、これを除けば既に10兆円割れしている可能性がある。
一方、供給されるアパレルの数量は1991年時点で約20億点だったが、2014年には約39億点に増えている。
つまり、市場規模が3分の2に落ちているのに、市場に出回る商品の数は倍増している、ということだ。
在庫処分業者のショーイチは2005年に設立された。
年商は10億円を超えるという。
商売が軌道に乗った理由について山本氏は、「定価販売の邪魔をしないよう、買い取った商品の販路に細心の注意を払っているから」と話す。
だが、それ以上に商売が成り立っている背景には、アパレル業界の構造的な問題があると感じているという。
「必ずムダな在庫を生む仕組みになっている。不良在庫を大量に抱えてしまうと、アパレル企業は新しい商品の生産に入れない。
それでも次のシーズンが来れば旬のアイテムを投入する必要がある。常に新商品を作らざるを得ないから、古くなった在庫を引き取る僕たちが
『必要悪』として存在している。

数年前にアパレル各社の業績が悪くなった時に滞留した在庫が今、流れてきている。
最近でもブランドの終了や閉店が相次いでいるから、また大量の商品が入ってくるだろう」(山本氏)

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