エシカルファッションはアパレル用語の1つで、生産プロセスに関わる全ての人が地球環境に配慮する、そういうファッションのことを指します。
商品作りに環境破壊を伴わないのは当然として、いわゆる労働搾取の排除も謳っている概念です。
良識や倫理といったものに照らし合わせて、これらの基準に合致するか否か、それこそが判断のポイントとなります。
エシカルは倫理や道徳といった意味で、法律では守ることができない価値観を守る為に、このような考え方が生まれたといえるでしょう。
生産現場のエシカル-ラナ・プラザの悲劇
生産に関わる全ての人と、地球環境に対する配慮が重要視される考え方ですから、人にも自然にも優しい商品に仕上がります。
消費者にとっては使用する製品の生産について考える切っ掛けに変わったり、選んだり購入する商品が地球に悪影響を与えていないかなど、今まで考えてこなかったことを思考することになります。
いずれにしても、何も考えずに生産を続けるやり方では、やがて破綻が生じて持続可能性が失われる恐れがあります。
何故この考え方が生まれたかといえば、それは生産を支える裏側で大きな悲劇が起こったことに端を発します。
2013年に発生したラナ・プラザの悲劇がアパレル業界全体に衝撃を与え、悲劇を繰り返さない為の活動が始まったとされます。
ラナ・プラザの悲劇は、ビルが崩壊するという最悪の事態が起こり、1000人を超える死者と2500人以上の負傷者を出しました。
このビルには、欧米のファッションブランドの縫製工場が入居していて、犠牲になった人の多くは低賃金で過酷な労働を強いられていたといわれています。
しかも、労働者の約80%は35歳未満で、下は18歳からと若い女性が中心でした。
妊娠してお腹に赤ちゃんを身籠っていた人もいたので、ラナ・プラザの悲劇は余計に悲劇性が増しました。
週7日間労働で休みはなく、繁忙期に入ると労働時間が更に長引くなど、雇用主による搾取があったわけです。
低賃金で長時間労働でしたが、残業をしても賃金の割増はなく、労働環境が改善されることもありませんでした。
貧困が当たり前の地域だったので、労働者達は仕事を失うことを極端に恐れました。
それが余計に改善を遠ざけ、目先の利益を追い求める企業の搾取を許してしまった形です。
ラナ・プラザの悲劇はこうしたアパレル業界の闇に目を向けさせ、問題を考える切っ掛けになっています。
皮肉なことに、多くの犠牲者が発生したことによって、これまで覆い隠されてきた問題が表面化しました。
この出来事は、業界の問題や知らずに加担している消費者の存在、そしてエシカルという考え方を生むことになります。
悲劇を知ったアパレル業界は価格競争を見直し、労働者に適正な賃金を支払うように動き出しました。
ここまで悲劇的なことは今のところ起こっていませんが、しかし常に業界の動向や取り組みに注目したり、商品選びを良く考えて行う必要があると思われます。
同じ過ちを繰り返さない為には、実際に起こったことから目を逸らさず、度々思い出して考えることが大事です。
悲劇があったことを遠い昔にしない、これこそがエシカルファッションの目的の1つだといえます。
悲劇を悲しんだり、流行に乗るつもりで商品を買うだけなら簡単ですが、それでも労働者に還元されることに意味があります。
完成された服は誰が作っているのか、思いを馳せることでもアパレル業界の自浄作用は働くはずです。
ただ、やはり行動を起こさなければ大きな改善は難しいので、何らかの行動を取ることが必要です。
極端に安い商品には、それを作る人に十分な報酬が支払われていなかったり、長時間労働が強いられている懸念が生じます。
そう思い次に何ができるかを考えると、具体的な行動の方針が見えてくるでしょう。
その選択肢の1つがまさにエシカルファッションで、意識的に選んだり購入すると、生産に従事する人を守ることに繋がります。
素材のエシカル-オーガニック
更に倫理の意識は環境にも及び、自然破壊を防ぐ為に何ができるかをアパレル業界が考えた結果、農薬と化学肥料を使用しないオーガニックやオーガニックコットンの採用が進みました。
オーガニックコットンは農薬や化学肥料を使わない素材のことで、地球だけでなく動物も傷つけずに済みます。
自然を守りながら原料を栽培可能な状況になるまで育て上げる労働者の身体も守れます。
取り組みが行われていない場合はコットンを手がける時に化学肥料を用いるのですが、化学肥料の使用によって1年間で2万人もの方々が命を落としている上に、300万人を超える方々が様々な健康被害を訴えています。
使用された化学肥料は強力なので、化学肥料を用いて栽培されたコットンが洋服工場に持ち込まれた際にも同様に健康に影響を及ぼし、洋服作りをしている方々にも影響が波及します。
素材のオーガニック-プラスチックリサイクル
地球環境に与えている影響として周知されているのがプラスチックゴミです。
海に世界中の国々から捨てられた大量のプラスチックゴミが浮遊していて海洋生物の生体に影響したり、プラスチックを食べた魚を人間が食べて体内にプラスチックの成分が入り込んでしまう健康被害も新たな懸念材料になっています。
他にもプラスチックが溶けて固まった物体が砂浜に生まれて怪我をしたり、生態や環境に影響を及ぼす事も懸念されています。
ですが、深刻化するプラスチックに纏わる問題もエシカルの取り組みによって解決できます。
ペットボトルなどのプラスチックはリサイクルすれば洋服の生地や繊維として使用可能なので、海を含めた環境が再び美しくさせられる上にコットンのように栽培者の健康に悪い影響を及ぼす事もありません。
こうしたエシカルは、2015年の9月に開催された国連サミットで提案された国際目標であるSDGsにも同時に取り組む事ができ、特に国際サミットにおいて継続性が重要であるとされた発展途上国の人々の暮らしを支える事に直接的に関係します。
アパレル業界の今後
現在はアメリカやイタリア、フランスや日本などで誕生し展開している世界的に知名度が高いファッションブランドの製品は、労働費用が低い発展途上国に工場を構えつつ現地の人々を雇用して製品作りを行っています。
しかも、雇用されている現地の人々の中には大人に混じって子供の姿も珍しくないので、働いている子供達は学校に通う事ができない上に低い賃金で長時間労働をしています。
取り組みを行えば洋服に適正な価格が付けられ、その結果雇用されている方々に適正な賃金が支払われるので発展途上国の人々の生活を潤す事ができますし、金銭面で学校に通えない子供達が学校に通えるようになり平等の教育が受けられます。
エシカルを日常生活や洋服の購入時に取り組むために大切なのは、購入する側が購入時に製品に使用されている生地や素材の材料について調べ、取り組みが行われている製品である様子を知った上で購入する事です。
さらに、消費者が取り組みに前向きでも取り扱いしているお店や洋服自体が少なければ理想的な取り組みをする事が難しいので生産者側は生産や製造、流通経路や卸す業者、ブランドなどを再考する事が大切です。
このように、エシカルは販売価格や使用する素材の見直しに結びついています。
勿論、単に商品価格が上がってしまっては、安い商品に慣れている多くの消費者が簡単に受け入れることはできないでしょう。
ですが、本気で問題に取り組んでいるメーカーは、企業努力でコスト削減を図っていますから、あまり商品価格を上げず労働者や環境保護を行うことに成功しています。
ユーザーはこの問題について考えたり、しっかりと取り組んでいるメーカーとその商品を選ぼうと意識が変化しています。
これからのアパレル業界においては、エシカルが大きなキーワードとなっていくでしょう。
弊社の取組み
弊社でも廃棄処分されるはずのウール製品を回収し、一度糸の状態に戻した後、丁寧に編み立てニット製品に仕上げる、日本のものづくりの技術を活かして作りました。
着心地、耐久性などを重ねて検討した結果、リサイクルウール80%、リサイクルナイロン20%の混率に。
当初予定していた天竺編みでサンプルを作成したところ、製品が斜行してしまう不具合が起きることが判明した為、急遽編地をガーター編みに変更し、安定したクオリティの製品に仕上げました。
また今回ネームや縫い糸にまでこだわり、洗濯ラベル再生ポリエステル、ミシン糸はペットボトル再生糸(スパン糸)のリサイクルポリエステルのrePETspunを使用し、商品に関わる全ての素材が100%リサイクル由来で仕上げることができました。
糸作りから編み上げまで日本製にこだわりながら、トップスが4,980円~、ストールが2,980円~、ワンピースが6,800円~という、普段使いできるプライスを実現しました。
年間18億枚のアパレル廃棄ゼロを目指す!捨てられる衣類から出来たリサイクルウール
是非ご賛同いただけたらと思います。