近年、「エシカルファッション」という言葉を目にする機会が増えました。取引先から人権や環境への取り組みを聞かれたり、社内でサステナビリティの担当を任されたりして、「そもそもエシカルファッションとは何か」を改めて整理したいと感じているアパレル企業の方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、エシカルファッションの意味、サステナブルファッションとの違い、10の基準、注目される背景、企業の事例を、アパレル企業の担当者向けにわかりやすく解説します。

エシカルファッションとは

エシカルファッションとは

エシカルファッション(Ethical Fashion)とは、服をつくる人・動物・地球環境に配慮してつくられ、選ばれるファッションのことです。「エシカル(ethical)」は英語で「倫理的な」「道徳的な」という意味です。

 

デザインや価格だけでなく、「この服は誰が、どこで、どんな環境でつくったのか」「着られなくなった後はどうなるのか」といった、服の背景まで大切にする考え方だといえます。

エシカル消費との関係

エシカルファッションのもとになっているのが「エシカル消費」という考え方です。消費者庁は、エシカル消費を地域の活性化や雇用なども含めて、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動と説明しており、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に関わる取り組みと位置づけています。

 

つまり、エシカル消費をファッションの分野で実践したものがエシカルファッションです。消費者が「選ぶ側」の責任を持つのと同じように、企業には「つくる側」としての責任が求められます。

出典:消費者庁「エシカル消費とは」

エシカルファッションが大切にする3つの視点

エシカルファッションで配慮する対象は、大きく次の3つに分けられます。

PEOPLE
人への配慮
工場や農園で働く人が、適正な賃金と安全な環境で働けること。児童労働や強制労働をなくすこと。
ANIMAL
動物への配慮
毛皮・レザー・羽毛などの動物由来素材について、使用を見直したり、動物福祉に配慮した調達を行ったりすること。
PLANET
環境への配慮
CO₂排出・水の使用・化学物質・廃棄物をできるだけ減らすこと。つくりすぎや売れ残りの廃棄を減らすこと。

サステナブルファッションとの違い

エシカルファッションとよく似た言葉に「サステナブルファッション」があります。環境省はサステナブルファッションを、服の生産から着用・廃棄までを通して将来にわたり持続可能であることを目指し、地球環境や関わる人・社会に配慮した取り組みと説明しています。

 

このように、2つの言葉は重なる部分が大きく、はっきり分けられるものではありません。一般的には、次のようにどこに重心を置くかで使い分けられています。

項目 エシカルファッション サステナブルファッション
重心 「倫理的に正しいか」
人権・労働環境・動物福祉を特に重視
「長く続けられるか」
資源・気候変動・廃棄などの環境負荷を特に重視
取り組み例 フェアトレード、工場の労働環境の確認、児童労働の排除、毛皮不使用 再生素材の活用、CO₂や水の削減、衣類の回収・リサイクル
共通点 大量生産・大量消費・大量廃棄の見直しを目指す点は同じ。実務では両方を一緒に進める企業がほとんどです。
出典:環境省「サステナブルファッション」

エシカルファッションの10の基準

エシカルファッションの10の基準とは

エシカルファッションには法律で決められた定義はありません。よく参照されるのが、イギリスの業界団体「Ethical Fashion Forum」が、エシカルファッションのアワードの審査基準としてまとめた10の基準です。

ここでは、それぞれの基準をアパレル企業の実務に置きかえた「取り組み例」とあわせて紹介します。

No.
基準
アパレル企業での取り組み例
1
使い捨て型のファッション消費に対抗する
生産量の見直し、長く着られる定番品の強化
2
公正な賃金・労働条件・労働者の権利を守る
取引先工場の賃金や労働時間の確認
3
つくり手の持続可能な暮らしを支える
無理な値下げ要求や急な発注変更をしない、継続的な取引
4
有害な農薬や化学物質の問題に取り組む
染料・加工剤の管理、安全基準の認証を受けた素材の採用
5
環境にやさしい素材や部材を使う・開発する
オーガニックコットンや再生繊維の採用
6
水の使用を最小限にする
染色・洗い加工の工程の見直し
7
リサイクル・省エネ・廃棄物の削減に取り組む
売れ残り在庫や端材を廃棄せず、リユース・リサイクルへ回す
8
持続可能なファッションの基準づくりを進める
業界団体のガイドラインに沿った社内ルールの整備
9
情報提供・教育・意識を高める活動を行う
社員研修、取り組み内容のWebサイトでの公開
10
動物の権利を守る
毛皮の不使用、動物福祉に配慮した素材の調達

10項目すべてを一度に満たす必要はありません。まずは自社の事業と関わりの深い項目から取り組むのが現実的です。たとえば在庫を多く抱える企業であれば、「7. リサイクル・廃棄物の削減」は今日から着手しやすいテーマです。

エシカルファッションが注目される背景

エシカルファッションが生まれた背景

エシカルファッションが広がった背景には、ファッション業界が抱える環境・人権の問題と、それに対するルールづくりの動きがあります。

大量生産・大量廃棄による環境への負荷

低価格でトレンドを素早く取り入れる服づくりが広がり、服は短いサイクルで大量につくられ、手放されるようになりました。環境省の推計では、日本国内の状況は次のとおりです。

日本の衣類をめぐる数字(環境省)
国内の新規供給量
約82万トン
使われないまま処理される量
約56万トン
(供給量の約7割)
1年間着られていない服
約24着/人
このほか、日本で使われる衣類に関わるCO₂排出量は約9,500万トン、水の消費量は約83.8億㎥と推計されています。
出典:環境省「衣類の資源循環システム構築に向けた現状」(令和7年10月)/環境省「サステナブルファッションとは」
※供給量・処理量は環境省が2024年に作成したマテリアルフローによる推計値です。推計方法が見直されているため、過去の年の数値とは単純に比較できません。

服は、原料の栽培から糸・生地・縫製・輸送まで、多くの資源とエネルギーを使ってつくられます。まだ使える服が使われないまま処理されることは、その資源をすべて無駄にしてしまうことを意味します。

ラナ・プラザ事故をきっかけに広がった人権への関心

エシカルファッションへの関心を世界的に高めたのが、2013年4月にバングラデシュで起きた「ラナ・プラザ」の崩落事故です。複数の縫製工場が入ったビルが崩れ、ILO(国際労働機関)によると、犠牲者は1,100人以上にのぼり、その多くが縫製工場で働く人たちでした。

 

この事故によって、「安い服の裏で、つくり手が危険な環境で働いているかもしれない」という問題が広く知られるようになりました。以来、服を販売するブランドには、自社工場だけでなく、取引先を含めたサプライチェーン全体の労働環境に責任を持つことが求められるようになっています。

出典:ILO「After Rana Plaza: How has safety improved for garment workers?」(英語)

日本でも進むルールづくり

日本でも、国や業界団体によるルールや目標づくりが進んでいます。

2022年
人権に関する業界ガイドラインを公表
日本繊維産業連盟が、ILO駐日事務所の協力のもと「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」を公表。強制労働・児童労働・賃金・労働時間などの確認項目を、中小企業でもチェックしやすい形でまとめています。
2023年
「責任ある企業行動実施宣言」の受付開始
宣言した企業は、経済産業省と日本繊維産業連盟のWebサイトで公表されます。
2030年度目標
家庭から廃棄される衣類を25%削減
家庭から手放される衣類のうち廃棄されるものを、2020年度比で25%減らすことが掲げられています。
出典:日本繊維産業連盟「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」/経済産業省「繊維」/環境省「衣類の資源循環システム構築に向けた現状」(令和7年11月)

海外では「売れ残りの廃棄」そのものが規制の対象に

EUでは、エコデザイン規則(ESPR)にもとづき、2026年7月19日から大企業による売れ残りの衣類・服飾雑貨・靴の廃棄が原則として禁止されました。中規模の企業にも2030年から適用される予定です。EUは、廃棄のかわりに在庫管理の改善や再販売、寄付、リユースなどを進めるよう企業に促しています。

 

日本国内ではまだ同様の規制はありませんが、「売れ残った服をどう扱うか」は、企業の姿勢が問われるテーマになりつつあります。

出典:European Circular Economy Stakeholder Platform「New EU rules to stop the destruction of unsold clothes and shoes」(英語)

アパレル企業がエシカルファッションに取り組むべき理由

エシカルファッションは「社会貢献」のイメージが強いかもしれませんが、アパレル企業にとっては取引や経営に直接関わるテーマです。主な理由は次の4つです。

01

取引先から確認を求められる場面が増えている
大手ブランドや小売企業が、取引先の人権・環境への対応状況を確認する動きが広がっています。対応できていないと、取引の継続に影響するおそれがあります。

02

国内外のルールが厳しくなっている
EUの廃棄禁止のように、「任意」だった取り組みが「義務」に変わる流れがあります。海外に販売・輸出している企業は特に注意が必要です。

03

ブランドへの信頼を守れる
工場での人権問題や大量廃棄が報道されると、ブランドイメージは大きく傷つきます。取り組みを正直に発信することは信頼につながります。

04

ムダなコストを減らせる
つくりすぎを防ぎ、売れ残りを廃棄以外の方法で活かせれば、生産コストや廃棄費用の削減にもつながります。

エシカルファッションに取り組む企業の事例

エシカルファッションへの企業の取り組み例

ここでは、エシカルファッションの3つの視点(人・動物・環境)ごとに、代表的な企業の取り組みを紹介します。

人への配慮:フェアトレードでつくり手を支える

ピープルツリー

ピープルツリーは、フェアトレード専門のファッションブランドです。途上国のつくり手と適正な価格で継続的に取引するフェアトレードを基本に、オーガニックコットンなどの天然素材や、その土地に伝わる手仕事を活かした服づくりを行っています。

 

公式サイトでは、ラナ・プラザの事故にもふれながら「安すぎる価格に疑問を持ち、誰がどのようにつくったのかを知ろうとすること」がエシカルへの一歩だと発信しています。

参考:ピープルツリー「エシカルファッションとは」

動物への配慮:レザーや毛皮などを使わない

ステラ マッカートニー(Stella McCartney)

2001年に創業したイギリスのラグジュアリーブランドです。創業当初から、倫理面と環境面の理由からレザー・毛皮・羽毛・動物の皮を製品に使わない方針を貫いています。代替素材の開発にも力を入れ、「動物由来素材を使わない高級ブランド」という新しい形を示してきました。

参考:Stella McCartney 公式サイト(英語)

環境への配慮:売れ残り在庫を廃棄せず資源に戻す

Shoichi(ショーイチ)

Shoichiは「リサイクルで世界中の衣類廃棄をゼロに。」を掲げ、アパレル企業の余剰在庫をリサイクルしている会社です。お預かりした衣類は自社で仕分け・解体し、再生ウールやフェルトなどの原料として活用しています。

 

また、仕分けや解体の作業には就労支援を受けている方々も携わっており、「環境への配慮」と「人が社会に参加しやすい環境づくり」を同時に実現している点も特徴です。

参考:shoichiが選ばれる理由

関連記事

より多くの国内外の企業事例はこちらの記事で詳しく紹介しています。

アパレル企業が始めやすい3つのステップ

「何から始めればいいかわからない」という企業は、次の3つのステップで考えると整理しやすくなります。

ステップ1:自社のサプライチェーンを知る

まずは、自社の製品がどの国の、どの工場でつくられているかを把握することから始めます。日本繊維産業連盟のガイドラインには、強制労働・児童労働・賃金・労働時間などの確認項目がリスト形式でまとめられているため、取引先へのヒアリングの出発点として活用できます。

ステップ2:素材とつくる量を見直す

環境負荷の低い素材を一部の商品から取り入れる、需要予測を見直して生産量を適正にするなど、無理なく続けられる範囲から始めましょう。つくる量を減らすことは、エシカルな取り組みであると同時に、在庫リスクを下げる経営上の対策にもなります。

ステップ3:売れ残り在庫の「出口」を決めておく

どれだけ工夫しても、売れ残りをゼロにするのは簡単ではありません。大切なのは、売れ残りが出たときに廃棄以外のどの方法で活かすかを、あらかじめ決めておくことです。主な選択肢には、アウトレットや二次流通での再販売、寄付、繊維原料としてのリサイクルなどがあります。

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→
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