「環境にやさしい服」というフレーズは、いまやアパレル業界で日常的に使われるようになりました。しかし実際に「何をどう変えればよいか」を体系的に理解できているアパレル企業の担当者は、まだ多くないのではないでしょうか。

この記事では、環境にやさしい服の定義・判断基準を整理したうえで、素材の選定から在庫廃棄への対応まで、アパレル企業が今すぐ実践できる具体的な取り組みをわかりやすく解説します。

「環境にやさしい服」とは?その定義と3つの判断基準

環境にやさしい服とは

「環境にやさしい服」に統一された定義はありませんが、環境省の「サステナブルファッション」の考え方を参考にすると、生産・着用・廃棄にいたるすべての工程で、地球への負荷をできるだけ抑えた服と整理できます。

アパレル企業の担当者として「環境にやさしいかどうか」を判断するうえでは、次の3つの軸が実務上の目安になります。

環境にやさしい服を判断する3つの軸

  • 素材:原料の調達から製造までにかかる環境負荷(水使用量・CO₂排出・農薬使用など)が低いか
  • 廃棄:売れ残り・不用品が焼却・埋め立てではなく、リサイクル・再利用に回されるか
  • 寿命:長く着られる品質と設計か、着なくなった後の回収・再資源化を想定しているか

この3軸のどれか一つを満たすだけでは不十分で、できるかぎり複数の観点で改善を積み重ねることが、「環境にやさしい服づくり」の実態に近づきます。

アパレル企業が取り組まなければならない背景

アパレル企業が取り組まなければならない背景

なぜいまアパレル企業は「環境にやさしい服」に本気で向き合わなければならないのでしょうか。その背景には、数字で見える深刻な現状があります。

  • 国内の衣類廃棄量:日本では年間約51万トンの衣類が廃棄されており、そのうち約95%が焼却・埋め立て処分されている(環境省調査)
  • 世界の衣服廃棄量:世界全体では年間約9,200万トンの衣服が廃棄されており、毎秒トラック1台分が捨てられている計算になる
  • 水質汚染:世界の工業用水汚染の約20%は繊維の染色・処理が原因とされている(環境省「ファッションと環境」)
  • 規制の強化:フランスでは衣類廃棄禁止法が施行済み。EU全体でもデジタル製品パスポート(DPP)義務化が予定されており、国際的な規制の流れは不可逆的に進んでいる

こうした環境問題への対応は、もはや「大手ブランドだけの話」ではありません。消費者・取引先・投資家が企業の環境姿勢を評価する時代において、中小アパレルブランドであっても「環境にやさしい服づくり」への取り組みは、企業の信頼性を左右する重要な経営課題になっています。

取り組み1. 環境にやさしい素材を選ぶ

服の環境負荷のかなりの部分は、素材の選定段階で決まります。原料の栽培・採取から糸・生地の製造過程における水使用量・農薬・CO₂排出量は、素材によって大きく異なります。

注目のエコ素材と特徴

1

オーガニックコットン農薬・化学肥料を極力使わずに栽培した綿。土壌汚染や農業従事者の健康リスクを抑えられる。通常コットンに比べ水使用量も低減できる品種が増えている。

2

リサイクルウール(反毛ウール)廃棄衣料を繊維レベルまで解きほぐした再生ウール。新規の羊毛採取が不要なため、水・飼料・CO₂排出量を大幅に削減できる。

3

リサイクルポリエステル廃ペットボトルや廃棄衣料を原料にした再生ポリエステル。バージンポリエステルと比べCO₂排出を約30〜50%削減できるとされる。スポーツウエアや機能性衣料での採用が急増している。

4

テンセル(リヨセル)・リネン森林認証を取得した木材パルプや亜麻を原料とする繊維。生分解性が高く、製造過程の水・溶剤も循環利用できる。風合いと機能性を両立しやすく導入しやすい素材のひとつ。

5

ヴィーガン素材・植物性代替レザーサボテン・キノコ・廃棄フルーツの皮などを原料とした革代替素材。動物由来皮革の製なめし工程の環境負荷(化学物質・水汚染)を大幅に低減できる。

素材選定で確認すべき認証マーク

「環境にやさしい」と謳うだけでは消費者・取引先の信頼は得られません。第三者認証を取得した素材を選ぶことで、根拠のある環境訴求が可能になります。

認証名 対象 認証のポイント
GOTS オーガニック繊維製品全般 農業段階から製品完成まで有機基準と社会基準を一括で担保
OEKOテックス® STANDARD 100 繊維製品・染料 有害物質の不使用を検査機関が証明。消費者安全面で信頼度が高い
GRS(Global Recycled Standard) リサイクル素材 再生原料の割合・トレーサビリティ・社会・環境要件を認定
FSC® 木材パルプ由来繊維(テンセル等) 持続可能に管理された森林からの原料調達を証明

取り組み2. 過剰在庫・廃棄問題を解消する

環境にやさしい服づくりを進めるうえで、素材の改善と並んで重要なのが余剰在庫の廃棄をゼロに近づけることです。どれだけ環境にやさしい素材を使っても、大量の売れ残りが焼却処分されてしまえば、環境負荷は大きく跳ね上がります。

余剰在庫を生まないための工夫

  • 需要予測の精度向上:POSデータ・トレンド分析ツールを活用し、過剰発注・過剰生産をシステム的に抑制する
  • 小ロット・受注生産の導入:見込みで大量生産するのではなく、需要に応じた適量生産に切り替え、在庫リスクをそもそも下げる
  • バーチャルサンプルの活用:試作段階でデジタルサンプルに移行することで、商品化されないサンプルの廃棄を減らす
  • シーズンレスな商品設計:トレンドを追いすぎず長期販売できるアイテムを中心に据えることで、シーズン末の在庫消化コストを構造的に圧縮する

どうしても残った在庫はリサイクルへ

需要予測や小ロット生産を導入しても、ゼロに削減することは現実には難しいのが在庫問題の本質です。残ってしまった在庫を「廃棄」から「リサイクル」に切り替えることが、環境負荷を下げる次のステップになります。

処理方法 環境負荷 コスト ブランドリスク
焼却・埋め立て 費用発生 低(ただしCSR上の評判リスクあり)
アウトレット・値引き販売 価格下落コスト ブランド価値毀損の懸念あり
寄付・社会貢献活動 輸送コスト等 タグ処理が必要な場合あり
繊維リサイクル業者への委託(買取) 最低 費用→売上に転換 タグカット処理で防止可能

Shoichiでは、これまで費用をかけて廃棄していたアパレル在庫をリサイクル原材料として買い取るしくみを提供しています。廃棄コストが売上に変わるだけでなく、ブランドタグを1点ずつ手作業でカットしてブランド毀損リスクもゼロに。リサイクル証明書の発行で、対外的な環境訴求にも活用できます。

余剰在庫・廃棄衣料をリサイクルで「環境にやさしい実績」へ
Shoichiが一貫サポート

廃棄予定在庫をリサイクル原材料として買い取り——廃棄コストが売上に変わる

ブランドタグを1点ずつ手作業でカット——二次流通・ブランド毀損を完全防止

大阪・奈良・三重に延べ9,600㎡の自社倉庫、年間600トン以上の処理能力

リサイクル証明書を発行——環境訴求・CSR報告に活用できる

機密保持契約の締結と社内セキュリティ管理の徹底

「何から始めればよいかわからない」「廃棄在庫が毎シーズン積み上がっている」
そんなアパレルブランド・メーカーの担当者様は、まずはお気軽にご相談ください。

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取り組み3. 製造・物流プロセスの環境負荷を下げる

素材と廃棄の改善に加えて、製造・物流の各プロセスでの環境負荷削減も、「環境にやさしい服」を実現するうえで欠かせない取り組みです。

  • 染色・加工工程の改善:有害物質を含む染料の排水は水質汚染の大きな原因。低水量染色技術の導入や、無染色素材(リサイクルウール等)の活用で排水量自体を削減できる
  • 工場・倉庫での再生可能エネルギー導入:製造・保管施設での電力をできるかぎり再エネに切り替えることで、製品ライフサイクル全体のCO₂排出量を削減できる
  • 包装材のプラスチックフリー化:ポリ袋から紙袋・リサイクル素材ハンガー・紙タグへの切り替えは、取り組みやすくかつ消費者に見えやすい改善策のひとつ
  • 輸送の効率化・モーダルシフト:航空輸送から船便・鉄道へのシフトや、配送ルートの最適化によってCO₂排出量を大幅に削減できる

取り組み4. 取り組みを見える化して発信する

どれだけ優れた取り組みをしていても、消費者・取引先・投資家に届かなければ価値は半減します。「見える化」と「発信」は、環境対応をブランド価値に転換するために不可欠なステップです。

1

商品タグ・ECページへの情報掲載素材の原産地・認証番号・CO₂削減効果・リサイクル率などを明記することで、消費者が購入時に環境情報を判断できるようになる。

2

オウンドメディア・SNSでのストーリー発信「どんな素材を・どんな理由で選んでいるか」「廃棄在庫をどのようにリサイクルしているか」を継続的に発信することで、ブランドへの共感と信頼を積み上げる。

3

リサイクル証明書の活用在庫をリサイクル処理した実績を証明する書類を取得・公開することで、「言葉だけでない」実績ベースの環境訴求が可能になる。取引先や投資家への開示にも有効。

4

年次サステナビリティレポートの公表廃棄ゼロへの年次目標と実績数値を定期的に公開することで、企業姿勢の一貫性を示し、グリーンウォッシュへの疑念を払拭できる。

グリーンウォッシュに注意

「環境にやさしい」と発信するだけで、実態が伴っていない状態は「グリーンウォッシュ」と呼ばれ、消費者の信頼を大きく損なうリスクがあります。EUでは2024年にグリーンウォッシュ規制の強化が進んでおり、日本でも同様の動きが注目されています。発信する情報は必ず根拠となる数値・認証・第三者証明と紐づけることが重要です。

環境にやさしい服づくりは、小さな一歩から始めよう

「環境にやさしい服づくり」は、素材の選定・余剰在庫の削減・製造プロセスの改善・情報発信の4つを継続的に積み重ねることで実現します。完璧な体制を一度に整える必要はありません。

まず自社が着手しやすいところから始め、実績を積み上げながら取り組みの範囲を広げていくことが、長期的なサステナビリティ経営への確実な一歩になります。