手軽にトレンドを楽しめるファストファッションは、私たちの生活に欠かせない存在になりました。その一方で、「大量生産・大量廃棄」「水資源の消費」「CO₂排出」など、深刻な環境問題を引き起こしていることも指摘されています。

 

この記事では、ファストファッションが環境に与える影響をわかりやすく整理したうえで、消費者と企業が今日からできる対策までを紹介します。ファッションを楽しみながら、地球にやさしい選択をするヒントを見つけてみてください。

 

(ファストファッションの意味やメリット・デメリットはこちらの記事で解説しています。)

ファストファッションが問題視される環境的な背景

ファストファッションが問題視される環境的な背景

ファストファッションは、私たちが手軽におしゃれを楽しめる一方で、地球環境に大きな負担をかけている産業でもあります。ここでは、ファストファッションが問題視されるようになった、環境的な背景について見ていきましょう。

生産に大量の水と資源を使う

衣類をつくるには、大量の水を使って綿花を育てたり、染料を使って布を染めたりと、自然環境に負荷をかける多くの工程が必要です。環境省の推計では、服を1着つくるのに必要な水は約2,368リットルにのぼり、これは1人が2年半ほどかけて飲む水の量に相当します。

 

また、染色に使われる化学薬品が川や海に流れ出ることで、水質汚染の原因にもなっています。

出典:環境省「サステナブルファッション」

生産・輸送・廃棄で多くのCO₂を排出

衣類の生産・輸送・廃棄のすべての工程でエネルギーが使われ、多くのCO₂が排出されます。とくにファストファッションのような大量生産・大量廃棄の仕組みでは、排出量が増えやすい傾向にあります。具体的な排出量は後述しますが、地球温暖化を防ぐうえでも、ファッション業界が取り組むべき課題は大きく、私たち消費者の意識も問われています。

ファストファッションの現状

下の図は、環境省が公開している「国内アパレル供給量・市場規模・衣類の購入単価の推移」に関するデータです。

 

「国内アパレル供給量・市場規模・衣類の購入単価の推移」に関するデータ

出典:環境省「サステナブルファッション」

上段の青い棒グラフでは、日本国内におけるアパレル供給量が、1990年から2020年にかけて大きく増加していることがわかります。1990年には約20億着だった供給量は、2010年頃には約40億着に達し、衣類の供給量が倍増している状況です。

 

一方、赤い折れ線で示される市場規模(=売上金額)は、横ばいもしくはやや減少傾向にあります。つまり、服の数は増えているのに、全体の売上は増えていないということです

 

この背景には、衣服1枚あたりの単価が大幅に下がっているという現実があります。下段の棒グラフを見ると、1990年には約6,900円だった平均単価が、2020年には約2,800円と半分以下にまで低下していることがわかります。

 

このように、ファストファッションは「手頃な価格でたくさんの服が買える」時代を作り出しましたが、「消費サイクルの短期化」「大量生産・大量廃棄の加速」といった持続可能性の面で深刻な問題を生み出しています。

ファストファッションが引き起こす環境問題

ファストファッションが引き起こす環境問題

ファストファッションは「安く・早く・大量に」服を届ける仕組みで、私たちの選択肢を広げました。しかし、その裏側では原材料の調達から生産・輸送・廃棄まで、あらゆる段階で環境に負荷がかかっています。ここでは、代表的な4つの問題を見ていきます。

大量生産・大量廃棄

流行の移り変わりに素早く対応するため、まだ着られる服でもすぐに「古い」と感じられ、短いサイクルで手放されがちです。環境省によると、日本ではリユース・リサイクルされずに焼却・埋め立て処分される衣類が年間で約46万トンにのぼります。これは、大型トラック約130台分を毎日処分している計算です。

出典:環境省「サステナブルファッション」

水資源の大量消費と水質汚染

衣類の生産には大量の水が使われます。環境省の推計では、服を1着つくるのに必要な水は約2,368リットル。原料となる綿花の栽培に多くの水が必要なうえ、染色・加工の工程で使われた排水が適切に処理されないと、河川や海の汚染につながります。

出典:環境省「サステナブルファッション」

CO₂排出 ― 約9割が「つくる段階」で発生

ファッション産業は大量のCO₂を排出しています。世界の衣類生産によるCO₂排出量は年間約21億トン、日本国内でも原材料調達から廃棄までのライフサイクル全体で約9,500万トンと推計されています。

 

注目すべきは、その大部分が原材料の調達や紡績・染色といった生産段階で発生している点です。環境省の資料では、上流の工程だけで全体の約9割を占めるとされています。

出典:環境省「サステナブルファッション」

CO₂の多くが「服を買う前」の段階で出ているということは、1着を長く大切に使うことが、そのまま環境負荷の削減につながることを意味します。

マイクロプラスチック

ポリエステルやナイロン、アクリルといった合成繊維は、洗濯のたびに細かな繊維くず(マイクロファイバー)を放出します。国際自然保護連合(IUCN)の2017年の報告では、海洋に流出する一次マイクロプラスチックの約35%が合成繊維の洗濯によるものと推定されており、これはタイヤの摩耗(約28%)を上回る発生源とされています。

 

ある研究では、ポリエステル製のフリース1枚を1回洗濯するだけで、最大約70万本ものマイクロファイバーが放出される可能性が示されました。

出典:IUCN『Primary Microplastics in the Oceans』(2017)

ファストファッション問題に対してできること

ファストファッションの課題は、「買わない」ことだけが正解ではありません。買い方・使い方・手放し方を少し整えるだけでも、ムダな生産や廃棄を減らす方向に寄与できます。まずは、日常で取り入れやすい行動から始めてみましょう。

1. 賢く選ぶ(買い方)

流行だけを追うのではなく、長く着続けられる服を意識的に選ぶことが第一歩です。シンプルで飽きのこないデザイン、丈夫な素材、しっかりした縫製の服は、買い替えの頻度を下げ、結果的にコストパフォーマンスも高くなります。

着回しやすさ・生地感・縫製を確認し、長く着られる服を選ぶ

「本当に必要か」を一呼吸おいて考え、衝動買いを減らす

古着・リユース品も選択肢に入れ、新品の生産に伴う負荷を抑える

2. 長く着る(使い方)

衣類は着用よりも洗濯によって傷むことが多く、お手入れの工夫だけで寿命を大きく延ばせます。ほつれ直しやボタン付け、裾上げといった小さな修理を習慣にするだけでも、1着を長く着られます。環境省は、いま持っている服を1年長く着るだけで、日本全体で約3万トンの廃棄削減につながると試算しています。

出典:環境省「サステナブルファッション」ファッションと環境へのアクション

また、洗濯を低温で行う、洗濯ネットを使う、乾燥機を避けるといった工夫は、服の傷みを防ぐと同時に、合成繊維から流れ出るマイクロファイバーを減らすことにもつながります。

3. 手放し方を工夫する(手放し方)

着なくなった服をゴミとして捨てるのは、環境への大きな負担になります。状態の良い服はフリマアプリや古着店、寄付を通じて次の人へ。傷みのある服も、自治体の回収ボックスや繊維リサイクルに対応した窓口を利用すれば、工業用資材や再生繊維として生まれ変わることができます。

アパレル企業にできること

ファストファッション問題は、消費者の努力だけでは解決しません。供給する側であるアパレル企業の取り組みが不可欠です。企業ができることは、大きく次の3つに整理できます。

つくりすぎない:需要予測の精度向上や受注生産・小ロット化で、過剰在庫と廃棄を抑える。

長く使える設計:丈夫で修理しやすい商品づくりや、公式リセール・レンタルで1着の寿命を延ばす。

回収・リサイクルの仕組みづくり:使い終わった服や在庫を回収し、資源として循環させる。自社だけで難しい場合は外部パートナーの活用も有効。

これらを実際に進めている企業の具体的な事例は、「ファストファッション問題に取り組む企業」の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

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まとめ

ファストファッションは、大量廃棄・水資源の消費・CO₂排出・マイクロプラスチックなど、さまざまな環境問題と結びついています。とはいえ、その多くは私たちの選択で変えられる部分でもあります。長く着る、賢く手放すといった一人ひとりの行動と、つくりすぎない・循環させるという企業の取り組みが重なることで、状況は少しずつ良い方向へ動きます。

 

企業にとって、とくに難しい「在庫の循環」は、Shoichiが在庫の買取・リサイクルという形でサポートします。自社の在庫の扱いを見直したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。