環境問題や労働問題への関心が高まるなか、ファッション業界でもサステナブルな取り組みが求められる時代になっています。しかし「実際に何から始めればいいのか分からない」と悩むアパレル企業も多いのが現実です。

 

この記事では、サステナブルファッションに向けてアパレル企業が取り組むべきポイントをわかりやすく解説するとともに、実際の事例も紹介します。自社でできる第一歩を一緒に考えていきましょう。

サステナブルファッションとは?

サステナブルファッション(Sustainable Fashion)とは、「地球や社会にできるだけ負担をかけず、資源を循環させながら洋服をつくり、着る」 という考え方です。

 

環境面では、原料の栽培・採取から製造、輸送、廃棄にいたるまでの CO₂排出・水使用・化学物質の使用量をできる限り抑えます。社会面では、工場で働く人びとの安全や賃金など、人権を守ることも欠かせません。循環面では、「つくる→使う→捨てる」で終わらず、修理・リユース・リサイクルで服の命を延ばし、資源をもう一度ファッションの原料として戻すことを目指します。

 

こうした取り組みを通じて、未来の世代が安心しておしゃれを楽しめる仕組みを築こうというのがサステナブルファッションの核心です。

エシカルファッションとの違い

似た言葉にエシカルファッション(Ethical Fashion)がありますが、両者には次のような焦点の違いがあります。

 

【サステナブルファッション】

  • 主な関心:気候変動・資源循環など環境負荷の低減
  • 具体例:再生素材の使用、CO₂排出削減、生分解性パッケージ
  • ゴール:「地球が長くもつ」しくみをつくる

【エシカルファッション】

  • 主な関心:労働環境・動物福祉など倫理的配慮
  • 具体例:フェアトレードコットン、レザー不使用、児童労働排除
  • ゴール:「人と動物にやさしい」しくみをつくる

 

実際のブランドやプロジェクトは、この二つを分けずに同時に取り組むケースがほとんどです。環境にも人にもやさしいファッションこそが、これからの新しい標準になりつつあります。

サステナブルファッションが注目される背景【環境問題】

ファッションは「作って、着て、すぐ捨てる」という直線型のビジネスモデルで急成長してきました。その結果、衣類が地球環境に与えるインパクトは 資源ロス・温室効果ガス・水質汚染 という3つの側面で深刻化しています。

 

ここでは代表的な問題点を見てみましょう。

大量生産・大量廃棄による資源の無駄

ファストファッションの普及により、衣類はこれまで以上に早いサイクルで大量に作られ、消費されるようになりました。その一方で、世界では毎年数百億点もの服が生産されているにもかかわらず、その約80%が売れ残りや不要品として焼却・埋め立てされていると国連(United Nations)が報告しています。

 

衣類を作るためには、綿花栽培に大量の水が必要であり、合成繊維を作るには石油資源を採掘する必要があります。さらに輸送や販売にも多くのエネルギーが使われていますが、それらの資源が「一度も着られないまま」失われていく現状は、大きな問題です。

 

サステナブルファッションは、このような大量生産・大量廃棄のサイクルを見直し、資源を有効活用する新しいファッションの形を目指しています。

衣類の焼却や埋め立てによるCO₂排出

売れ残りや着古された衣類は、多くが焼却処理されています。特に合成繊維を燃やすと、CO₂だけでなく有害なガスも発生し、ファッション・繊維業界は世界全体の温室効果ガス排出量の2〜8%を占めていると国連環境計画(UNEP)が推計しています。

 

また、埋め立て処分された場合でも、繊維が分解される過程で強力な温室効果ガスであるメタンが発生します。メタンはCO₂よりも温暖化効果が高く、気候変動対策の観点からも、衣類の埋め立ては「最後の手段」とされています。

 

こうした背景から、CO₂排出を抑え、環境負荷を減らすサスティナブルな取り組みがますます求められています。

水質汚染やマイクロプラスチック問題

衣類の製造工程でも、環境への影響は深刻です。染色や加工には大量の水が使われ、適切に処理されない排水が川や海を汚染するケースもあります。さらに、ポリエステルなどの合成繊維の衣類を洗濯する際、目に見えない細かい繊維(マイクロファイバー)が水中に流れ出すことも問題の一つです。

 

これらは最終的に海に流れ込み、海に流入するマイクロプラスチックの約9%が衣類由来であることが、国連環境計画(UNEP)によって指摘されています。

 

このような汚染を防ぐためにも、サステナブルファッションでは、素材選びから生産工程、着用後のリサイクル・再利用まで、環境負荷を最小限に抑える取り組みが広がっています。

サステナブルファッションが注目される背景【労働問題】

サステナブルファッションが注目される背景には、環境問題だけでなく、ファッション業界における「労働問題」も深く関わっています。大量生産を支える裏側には、過酷な労働環境や人権問題が存在しており、これらを改善しようとする動きが世界中で広がっています。

 

ここでは代表的な2つの視点から、労働問題についてわかりやすく解説します。

劣悪な労働環境での大量生産

ファッション業界では、コストを抑えて大量に衣類を生産するため、労働力の安い国々に生産拠点を置くことが一般的になりました。しかしその結果、十分な労働環境が整っていない工場で、長時間労働や低賃金で働かされる労働者が多く存在しています。

 

特に途上国では、建物の安全基準が守られていない工場での事故や、最低限の賃金すら支払われないケースもあり、労働者の人権が深刻に侵害されている現実が大きな問題です。

 

この現実に対する問題意識から、サステナブルファッションの重要性がますます高まっています。

サプライチェーンの透明性への関心の高まり

「この服は、どこで、誰が、どのように作ったのか?」 近年、消費者や企業の間でこうしたサプライチェーンの透明性を求める声が高まっています。従来のファッション業界では、原料の調達から製造、流通に至るまでの過程がブラックボックス化していることが多く、労働者の権利侵害や環境破壊が見えにくい状況にありました。

 

しかし現在は、フェアトレード(公正取引)やエシカルファッション(倫理的なファッション)への関心が高まり、企業に対しても「生産過程を公開する」ことが求められるようになっています。

 

サステナブルファッションの推進においては、単に製品そのものを環境に配慮するだけでなく、「作る人の尊厳を守ること」も非常に重要なテーマとなっているのです。

サステナブルファッションに取り組む企業

サステナブルファッションは、もはや一部のブランドだけの話ではありません。

 

ここでは、サステナブルファッションに取り組む企業を厳選して紹介します。

1. Shoichi

Shoichiは「リサイクルで日本の廃棄をゼロに。」を掲げ、衣類のリサイクル事業を展開している会社です。アパレル企業が費用処理する廃棄衣料をすべてリサイクル原料として買取り、リサイクルで甦らせる取り組みを行なっています。

 

shoichiのリサイクル事業の特徴・メリットは、主に以下のとおりです。

  • 【安全性】リサイクル工程はShoichiが一元管理で行うためブランド毀損の危険性がない
  • 【コストパフォーマンス】これまで費用をかけてた廃棄が売上に変わる
  • 【キャパシティ】大量の依頼にも対応可能
  • 【柔軟性】スピード感を持って臨機応変にお客様の依頼に対応

さらにshoichiではアパレル廃棄ロス問題を解決すべく、100%リサイクル素材にこだわったニットの製造・販売も行なっています。環境に配慮して商品でありながら、普段使いできる価格帯、デザインへのこだわりが特徴です。

 

その他、社会的・環境的な取り組みの一貫として「CO2削減プロジェクト」「TASUKEAI 0 PROJECT」など、多くの取り組みも注目されています。

 

shoichiのリサイクル事業の詳細

2. パタゴニア(Patagonia)

パタゴニアは 2025年までにバージン石油由来素材をすべて排除 し、再生原料や自然繊維へ全面移行するロードマップを公表しています。同社が展開する「Worn Wear」プログラムでは、修理・中古品再販・リメイクを通じて製品寿命を大幅に延ばし、廃棄物を抑制。

 

さらに Regenerative Organic Certified™ コットン の導入により、農地の炭素固定や生物多様性保全まで踏み込んだサプライチェーン改革を進めています。​

 

参照:Patagonia

3. ユニクロ(ファーストリテイリング)

ユニクロは店舗常設の「RE.UNIQLO」ボックスで不要衣料を回収し、国内外のリユース・リサイクル・難民支援に活用しています。2025年にはリペア専門拠点「RE.UNIQLO STUDIO」を国内16店舗へ拡大し、有料修理サービスを強化。

 

加えて 2030年までに温室効果ガスを2019年度比で90%削減、全使用素材の約50%をリサイクル素材にするなど、温室効果ガスの排出量が少ない素材に変える動きを加速させています。​

 

参照:ユニクロ

4. スノーピーク(Snow Peak)

アウトドアブランドのスノーピークは、裁断くずを糸へ戻す「UPCYCLE COTTON PROJECT」で原料循環を実現し、廃棄ゼロを目指しています。

 

さらにウェアにもギアと同様の生涯保証を適用し、リペアセンターでの補修やリメイクイベントを通じて“長く使い続ける文化”をユーザーと共創。これらの活動が循環型ビジネスモデルの礎となっています。​

 

参照:スノーピーク

5. アディダス(adidas)

アディダスは2024年からアパレル・フットウエアを リサイクルポリエステル100% に移行し、2025年までに製品の90%をサステナブル仕様へ転換する「3つのループ」戦略を展開しています。

 

設計段階から回収と再製品化を前提にした「Made to Be Remade」シリーズや、完全リサイクル可能スニーカー「Futurecraft Loop」を投入し、循環型モデルの実証を進めています。​

 

参照:adidas

個人ができるサステナブルファッションへの取り組み

サステナブルファッションというと「企業がやること」と思われがちですが、実は私たち一人ひとりにもできることがたくさんあります。日々の服選びや手放し方を少し工夫するだけでも、環境負荷を減らし、より持続可能な社会づくりに貢献できます。

 

ここでは、今日からできる4つの具体的な取り組みをご紹介します。

長く着られる服を選ぶ

まずは「長く着続けられる服を選ぶこと」がサステナブルファッションの第一歩です。流行だけを追うのではなく、シンプルで飽きのこないデザインや、丈夫な素材・縫製の服を選ぶようにしましょう。長持ちする服を選ぶことで、すぐに買い替える必要がなくなり、結果的に生産・廃棄に伴う資源やエネルギーの無駄を減らすことができます。

 

また、手入れをしながら大切に着ることで、愛着も湧いてきます。

古着やリユース品を取り入れる

新品だけでなく、古着やリユース品を積極的に取り入れるのも大切なアクションです。リサイクルショップやフリマアプリなどを活用すれば、まだ十分着られる服を新たに資源として活かすことができます。

 

「新しい服を買わなければならない」という固定観念を少し変えるだけで、廃棄されるはずだった服に新たな命を吹き込むことができます。

不要な服は捨てずに寄付・リサイクルへ

着なくなった服をすぐにゴミ袋に入れてしまうのはもったいないことです。状態のよい服は、リサイクル団体や寄付団体を通じて、必要としている人たちに届けることができます。また、ボロボロになった衣類も、自治体のリサイクル回収やアパレル企業の回収プログラムを利用すれば、工業用のウエス(布きれ)や新しい繊維製品に生まれ変わることが可能です。

 

「捨てる」のではなく、「活かす」という選択肢を持つことが、サスティナブルな行動につながります。

エシカル・サステナブルブランドを選ぶ

最近では、環境配慮や労働環境への配慮を掲げるエシカル・サステナブルブランドも増えてきました。購入する際には、「このブランドはどんな取り組みをしているのか」をチェックしてみるのもひとつの方法です。

 

たとえば、オーガニックコットンを使用していたり、フェアトレード認証を受けていたりするブランドは、社会にも環境にも配慮したものづくりを行っています。自分の消費行動を通じて、応援したい企業や理念を選ぶことも、サステナブルファッションの大切な一歩です。

アパレル企業ができるサステナブルファッションへの取り組み

サステナブルファッションを推進するためには、アパレル企業の取り組みが欠かせません。環境への負荷を減らし、資源を大切に使うビジネスモデルへ転換していくことで、企業の社会的価値も高まります。

 

ここでは、アパレル企業が今すぐ実践できる4つの具体的な取り組みを紹介します。

在庫ロス・廃棄の削減

アパレル業界では、売れ残った在庫を大量に抱え、最終的に廃棄するという課題が長年続いています。この「在庫ロス」は、大量の資源とエネルギーを無駄にするだけでなく、廃棄処理時のCO₂排出にもつながります。

 

在庫ロスを減らすためには、過剰な生産を抑える工夫が必要です。たとえば、トレンド予測の精度を高めたり、小ロット生産を取り入れたりすることで、需要に見合った生産量にコントロールできます。また、売れ残った商品もすぐに廃棄せず、リユースやリサイクルの仕組みを活用することで、資源の循環につなげることができます。

在庫管理

在庫ロスを防ぐには、「そもそも在庫を適切に管理する」ことがとても重要です。リアルタイムで在庫の動きを把握できるシステムを導入したり、定期的な棚卸しを行うことで、無駄な発注や売れ残りのリスクを減らすことができます。

 

また、販売データを分析して「どのアイテムがどの時期に売れやすいか」を把握することで、より効率的な在庫計画を立てることが可能となるでしょう。在庫管理の精度を高めることは、資源ロス削減だけでなく、収益改善にも直結する重要なポイントです。

情報発信で消費者の意識を高める

どれだけサステナブルな取り組みをしていても、消費者に伝わらなければ効果は半減してしまいます。だからこそ、企業側から積極的に情報発信を行い、「なぜサステナブルな取り組みをしているのか」「どう環境に配慮しているのか」をわかりやすく伝えることが重要です。

 

たとえば、

  • 商品タグに「この製品に使われている素材」や「CO₂削減効果」を明記する
  • オウンドメディアやSNSでサステナブルな取り組みをストーリーとして発信する
  • 店頭POPやWebサイトで「服を長く大切に着るためのケア方法」を紹介する

 

といった工夫をすることで、消費者の共感を得ることができます。 一人ひとりの意識が変われば、ファッションの未来も大きく変わっていきます。

サステナブルファッションに取り組みたいアパレル企業はShoichiにお問い合わせください

Shoichiは、衣類のリサイクル事業を展開している会社です。アパレル企業のサステナブルファッション実現のための取り組みをサポートするため、以下のような体制を整えています。

 

  • ブランドタグを1点ずつ手作業でカットし、二次流通を完全に防止
  • 守秘義務契約の徹底と、社内セキュリティ管理の強化
  • 広大な自社倉庫と、年間600トン規模の処理能力
  • リサイクル証明書の発行により、透明性のある処理プロセスを保証
  • リサイクル可能な在庫を原料として買い取るため、廃棄コストの削減も実現

 

「サステナブルファッションに取り組みたいが、どう始めていいかわからない」
「ブランド価値を守りながら、環境に優しいリサイクルをしたい」

 

そんなお悩みをお持ちのアパレル企業様は、ぜひShoichiにご相談ください。初めての方にもわかりやすく、安心してお任せいただける体制でお応えいたします。