トレンドの服を手軽に楽しめるファストファッションは、私たちの生活に欠かせない存在とです。しかしその一方で「大量生産・大量廃棄」「水資源の消費」「CO₂排出」など、深刻な環境問題も問題視されています。

 

本記事では、ファストファッションがもたらす環境への影響をわかりやすく解説するとともに、企業や消費者ができる具体的な対策もご紹介します。

 

ファッションを楽しみながら、地球にやさしい選択をするためのヒントを見つけてみてください。

目次

ファストファッションとは?

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ファストファッションとは、最新のトレンドをいち早く取り入れた衣服を、手頃な価格で大量に生産・販売するファッションの形です。多くのブランドが毎週のように新商品を投入し、消費者は安く手軽に服を購入できるようになっています。

 

このようなスタイルは、手軽におしゃれを楽しめる一方で、「大量生産・大量消費」の構造を生み出していることでも知られています。

ファストファッションの現状

下の図は、環境省が公開している「国内アパレル供給量・市場規模・衣類の購入単価の推移」に関するデータです。

「国内アパレル供給量・市場規模・衣類の購入単価の推移」に関するデータ

出典:環境省 持続可能なファッション政策

 

上段の青い棒グラフでは、日本国内におけるアパレル供給量が、1990年から2020年にかけて大きく増加していることがわかります。1990年には約20億着だった供給量は、2010年頃には約40億着に達し、衣類の供給量が倍増している状況です。

 

一方、赤い折れ線で示される市場規模(=売上金額)は、横ばいもしくはやや減少傾向にあります。つまり、服の数は増えているのに、全体の売上は増えていないということです。

 

この背景には、衣服1枚あたりの単価が大幅に下がっているという現実があります。下段の棒グラフを見ると、1990年には約6,900円だった平均単価が、2020年には約2,800円と半分以下にまで低下していることがわかります。

 

このように、ファストファッションは「手頃な価格でたくさんの服が買える」時代を作り出しましたが、「消費サイクルの短期化」「大量生産・大量廃棄の加速」といった持続可能性の面で深刻な問題を生み出しています。

ファストファッションが問題視される環境的な背景

ファストファッションが問題視される環境的な背景

ファストファッションは、私たちが手軽におしゃれを楽しめる一方で、地球環境に大きな負担をかけている産業でもあります。ここでは、ファストファッションが問題視されるようになった、環境的な背景について見ていきましょう。

ファッション業界は世界で第2位の汚染産業

あまり知られていませんが、ファッション業界は石油産業に次いで、世界で2番目に環境を汚染している産業とも言われています。

 

衣類をつくるには、大量の水を使って綿花を育てたり、染料を使って布を染めたりと、自然環境に負荷をかける多くの工程が必要です。

 

たとえば、Tシャツ1枚をつくるだけでも、約2,300リットルの水が必要とされ、これは1人が2年半かけて飲む水の量に相当します。また、染色に使われる化学薬品が川や海に流れ出ることで、水質汚染の原因にもなっています。

年間のCO₂排出量は約90,000kt

ファッション業界が排出する二酸化炭素(CO₂)の量は、年間およそ90,000キロトン(kt)にも上ります。

 

衣類の生産・輸送・廃棄のすべての工程でエネルギーが使われており、特にファストファッションのような大量生産・大量廃棄の仕組みでは、このCO₂排出量はますます増える傾向にあるでしょう。

 

地球温暖化を防ぐためにも、ファッション業界が取り組むべき課題は非常に大きく、私たち消費者の意識も問われているのです。

ファストファッションがもたらす環境問題

ファストファッションがもたらす環境問題

続いて、ファストファッションがどのように、環境問題を引き起こしているのか、ここでは主な環境問題を解説します。

大量生産・大量廃棄による水とエネルギーの消費

ファストファッションは、短期間で多くの服を生産・販売する仕組みです。そのため、製造には大量の水とエネルギーが必要になります。

 

たとえば、綿の栽培や布の染色には多くの水が使われ、Tシャツ1枚の製造に約2,300リットルの水が必要ともいわれています。

 

また、工場の稼働や物流でも電力・燃料が大量に使われ、資源の消費が加速しています。

廃棄衣類の焼却・埋立による温室効果ガスの排出

売れ残った服や、着られなくなった衣類の多くは焼却処分されています。このときに出るのが、二酸化炭素(CO₂)やメタンガスといった地球温暖化の原因となる温室効果ガスです。

 

また、埋め立てられた衣類は、分解されるまでに数十年〜数百年かかるうえ、分解の過程で有害物質が出ることもあります。

染料や薬品による川や海の汚染

衣類をカラフルにしたり機能性を持たせたりするために使われる染料や化学薬品。その多くは処理が不十分なまま排水され、川や海に流れ込んでしまうことがあります。

 

これが水質汚染を引き起こし、魚や水中の生き物に悪影響を与えるだけでなく、私たちの飲み水にも関わる深刻な問題です。

増え続ける衣類のゴミと埋立地のひっ迫

日本国内だけでも、年間50万トン以上の衣類が廃棄されているといわれています。そのうち再利用されているのはわずかで、多くがゴミとして処分されています。

 

こうした衣類ゴミが増え続けることで、埋立地はひっ迫し、処分のための新たな土地やコストが必要になります。

安価で大量に買い替えるライフスタイルの定着

「安いからまた買えばいい」「ワンシーズンで着なくなる」といった考え方が広まり、衣類を長く使う文化が失われつつあります。

 

このようなライフスタイルが定着すると、ますます大量生産・大量廃棄が進み、環境への負荷も大きくなってしまうでしょう。

消費者ができるファストファッションへの取り組み

消費者ができるファストファッションへの取り組み

ファストファッションによる環境問題は、企業だけでなく私たち消費者の行動によっても変えていくことができます。

 

ここでは、私たち消費者が日々の買い物や衣類の扱い方を少し工夫するだけでできる、身近な取り組みを紹介します。

長く着られる服を選ぶ

「流行だから」「安かったから」と衝動的に買うのではなく、品質がよく長持ちする服を選ぶことが大切です。

 

シンプルなデザインで飽きが来ず、縫製がしっかりしている服は、何年にもわたって着続けることができます。

 

着る回数が増えることで、1回あたりの環境負荷(CO₂排出や水の使用量など)を抑えられるでしょう。“すぐに捨てず、できるだけ長く大切に使う”という意識が、持続可能な消費につながっていきます。

サステナブルなブランドを選ぶ

最近では、環境や人権に配慮したサステナブルファッションブランドも増えてきています。

 

再生素材を使用した服や、余剰在庫をリサイクルに回しているブランドを選ぶことで、地球や人にやさしい買い物ができます。

 

ブランドのホームページやタグには、使用素材・生産背景・リサイクル活動の情報が記載されていることもあるので、購入前にチェックしてみるのもおすすめです。

着なくなった服は捨てずにリサイクルへ

もう着なくなった服は、ごみとして捨てるのではなく、リユースやリサイクルするのが理想的です。まだ着られる状態なら、古着屋さんや寄付、フリマアプリなどで次の人に引き継ぐ方法があります。

 

傷んでいて着られない場合でも、回収ボックスやリサイクルサービスを活用すれば、繊維資源として再利用される可能性があるでしょう。ちょっとした心がけが、ファッション業界全体の環境負荷を軽減する一歩になります。

ファッション業界・アパレル企業ができる取り組み

ファッション業界・アパレル企業ができる取り組み

ファストファッションによる環境負荷が問題視されるなか、ファッション業界やアパレル企業には持続可能な社会の実現に向けた取り組みが求められています。

 

ここでは、企業として実践できる主なアクションを紹介します。

長く使える服づくりを目指す

「すぐに着なくなる服」ではなく「長く大切に使える服」を目指すことが重要です。たとえば、丈夫な素材を選んだり、流行に左右されにくいデザインにすることで、服の寿命を延ばすことができます。

 

これにより、買い替えの頻度を減らし、廃棄される衣類の量も抑えられるでしょう。

適正な生産量で在庫を抑える

売れ残りを出さない工夫も大切です。過剰に生産してしまうと、売れなかった服が大量に廃棄される原因になります。

 

需要を見極めて必要な量だけをつくる「適正生産」を心がけましょう。最近では、予約販売や小ロット生産などを取り入れる企業も増えています。

余剰在庫をリサイクルし、廃棄を減らす

どうしても出てしまう余剰在庫は、廃棄せずリサイクルすることで、環境への負荷を減らすことができます。たとえば、着られなくなった服を繊維として再利用したり、新しい製品の原料として活用することも可能です。

 

自社でリサイクルの仕組みを構築するのが難しい場合は、リサイクルに力を入れている企業に依頼するのも良いでしょう。さブランド価値を守りながらリサイクルできる仕組みを取り入れる企業も出てきています。

リユースや回収の仕組みを整備する

使わなくなった服を捨てずに再利用するために、リユース(再利用)や回収の仕組みをつくることも重要です。

 

店舗での回収ボックス設置や、再販プラットフォームの活用などを通じて、服が循環する仕組みを整えることで、廃棄量の削減につながります。

企業としての社会・環境配慮を発信する

取り組みを行っていても、それが消費者に伝わらなければ意味がありません。

 

自社がどのように環境や社会に配慮しているのかを、SNSやWebサイトなどで積極的に発信することで、消費者の共感や信頼を得ることができます。

 

余剰在庫をどのように処理しているのかなど、ブランドとしての姿勢を明確にすることも、SDGs時代の企業活動においては大切です。

ファストファッションへの取り組みが進まない障壁

ファストファッションへの取り組みが進まない障壁

前項で解説したように、ファッション業界では、環境への影響を減らす取り組みが求められていますが、実際にはすぐに行動に移せない企業も多く存在します。

 

ここでは、企業が持続可能な取り組みを進めるうえで直面する主な課題について紹介します。

環境対策へのコスト負担が大きい

環境に配慮した素材の使用や、リサイクル・回収システムの整備には、従来よりも多くのコストがかかることがあります。特に中小規模のアパレル企業にとっては、こうした追加コストが大きな負担となり、すぐに導入できないケースも少なくありません。

 

「利益を優先せざるを得ない」という経営上の判断が、取り組みの足かせになることがあります。

余剰在庫のリサイクル過程でブランド毀損のリスクがある

服をリサイクルに回す際、ブランドタグが付いたまま流通してしまうと「セール品や処分品が出回っている」という印象を与え、ブランドイメージを損なう恐れがあります。

 

このブランド毀損のリスクを懸念して、リサイクルの導入に踏み出せない企業も多くいるでしょう。リサイクルをするには、情報管理やタグ除去などの対策が必要であり、そこにもまた手間とコストがかかります。

消費者の“安くて早い”ニーズが依然として強い

ファストファッションは「安くてすぐに手に入る」という手軽さから、今でも多くの消費者に支持されています。環境配慮型の商品を提供したいと考えても「価格が高い」「すぐに手に入らない」といった理由で売れにくくなることも。

 

企業としては、こうした消費者ニーズとのバランスをどう取るかが大きな課題となっています。

Shoichiはアパレル企業のサステナブルな取り組みを支援します

「ファストファッションの課題に向き合いたい」そう思っていても、コストやブランドイメージ、処分方法の不安からなかなか踏み出せない企業様も多いのではないでしょうか。

 

Shoichiは「リサイクルで日本の廃棄費用をゼロに。」を掲げ、リサイクル事業を展開している会社です。アパレル企業の悩みに応えるべく、余剰在庫の再資源化・リサイクルを通じた課題解決をサポートしています。

 

以降でShoichiにおける、衣類のリサイクル事業の特徴を紹介するので、ファストファッションへの取り組みに課題を感じているブランド・アパレル企業様は、ぜひ目を通してみてください。

 

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廃棄コストを抑え、環境と企業にメリットをもたらすリサイクル

Shoichiでは、不要になった在庫を「リサイクル原料」として買い取る仕組みを導入しています。これにより、従来「廃棄費用」としてかかっていたコストを抑えながら環境にも配慮した処理が可能に。

 

「処分コストが重くてリサイクルに踏み出せなかった」という企業様にも、経済的・社会的なメリットを提供できます。

ブランド価値を守りながら、安全にリサイクル

Shoichiでは、回収した衣類を1点ずつ手作業で検品・解体し、ブランドタグや洗濯表示を確実に除去社名や商品情報の漏洩を防ぐ万全のセキュリティ体制で、二次流通やブランド毀損のリスクを完全に排除しています。

 

守秘義務契約の締結や、スタッフの権限管理も徹底しているため、安心して在庫処理をお任せいただけます。

大量在庫・短納期にも柔軟対応

Shoichiは全国に広がる自社倉庫(総面積5,000㎡)と、年間600トン超の処理能力を保有しています。サンプル品などの小ロットから、大型店舗の在庫入れ替えなど大規模な依頼にも迅速対応可能です。

 

アパレル現場の実情に即した、現実的なサポート体制が整っています。

リサイクル証明書を発行

リサイクルの全工程が完了した後には、解体処理や資源化処理の完了を証明する「リサイクル証明書」を発行。回収した衣類が「どのようにリサイクルされたのか」まで明確に確認できる体制を整えています。

 

これにより、企業は安心して取り組みを進められるだけでなく、外部や消費者に向けた透明性ある発信が可能になります。

在庫の悩みから始めるサステナブルな第一歩を

ファストファッションの特性上、すぐに業態全体を変えることは簡単ではありません。しかし、だからこそ今ある課題から一歩ずつ取り組んでいくことが、現実的で持続可能なサステナブル経営につながります。

 

Shoichiでは、そんな第一歩として「在庫のリサイクル支援」に力を入れています。

余った在庫を無理なく環境にやさしい形で処理したい
SDGsに取り組みたいが、何から始めればいいかわからない

 

そんなお悩みをお持ちのアパレル企業様は、ぜひ一度Shoichiにご相談ください。Shoichiは、ブランド価値を守りながら廃棄を減らす仕組みづくりを全力でサポートいたします。

 

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