廃棄ゼロ社会への架け橋
2025年5月19日 5:56 PM
大量生産・大量廃棄というアパレル業界の構造に対し、環境への配慮や企業の社会的責任が強く問われるようになった現代。そんな中、在庫再生の専門企業として知られる大阪発のショーイチが、独自のリサイクルスキームを武器に、持続可能なビジネスの実現に向けた取り組みを加速させている。
年間4000万点を買い取り、適切に管理
創業以来、法人向けの在庫処分事業を展開してきたショーイチは、今では全国3000社以上から、年間4000万点にのぼる衣料品を回収。大阪・奈良・三重にまたがる延床5000㎡の自社倉庫で、アイテムをエリアごとに分類・保管し、在庫の混同や流出を防いでいる。この細やかな在庫管理体制が、ブランド価値の保全にも貢献している。
一貫管理によるリサイクル体制で信頼性を確保
リサイクルの工程は、すべてショーイチが責任を持ってコントロール。回収された衣料品は、まず自社スタッフと就労支援施設の協力により手作業で解体され、タグや金具などの副資材が取り除かれる。その後、ウールの混率によって「再生ウール用」と「フェルト用」に分類され、それぞれ提携する再生工場へ送られる。
たとえば、ウール比率の高い素材は愛知・一宮の工場でリサイクルウールに、その他は大阪・泉大津の工場で反毛処理が施される。再生された素材は一部、セーターなどの製品に再利用され、すでに3000枚以上の販売実績を持つ。
社会貢献とビジネスの融合を実現
ショーイチのリサイクル事業の根幹を支えているのが、自社グループで運営する就労継続支援施設との連携だ。ここでは、障がいのある方々が衣料品の分解や仕分けといった作業を担当。作業の対価は施設運営に充てられ、就労支援とリサイクルビジネスの両立が実現している。
一般的には、余剰在庫をリサイクルするにはコストがかかるため、企業側がその費用を負担することが多い。しかし、ショーイチでは在庫を「仕事の材料」として施設で再活用する仕組みを確立。これにより、企業の費用負担は軽減され、働く人々には収入と経験の機会が提供される。
「低コストかつ安全」な循環型ビジネスの提案
代表の山本氏は、「我々は、単にリサイクルをするのではなく、コスト面・安全面・社会的意義の3つを両立させることを追求している」と語る。ブランドタグを確実に除去し、在庫流出リスクを排除する取り組みも評価が高い。
「企業が安心して廃棄ではなく再利用を選べる環境を整えたい。そのためには、リサイクルが高コストであってはならないし、情報漏洩の心配があってもいけない。我々が目指すのは、安心して任せられる“次世代の在庫循環モデル”なんです」と山本氏は続ける。
ショーイチの挑戦は、ただの在庫処分を超え、環境、雇用、経済の三領域における新たな循環を生み出している。
【著者紹介】

株式会社shoichi代表取締役
所属団体:KanFa関西ファッション連合/日本繊維機械学会/JAFIC 一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会
大学在籍中からヤフーオークションでブランド商品・アパレル等の販売などを行い オークションで仕事をする自営業の道を選ぶ。 その後在庫処分ビジネスをスタートし、20年間在庫処分の業界に身を置く。 累計4000社のあらゆる在庫処分を手掛ける。
山本昌一プロフィール>>