在庫買い取りのプロが挑む、衣料リサイクルへの本気
2025年5月19日 5:52 PM
国内最大規模のアパレル在庫買取を行う大阪の企業が、今本気で向き合っているのが、衣料品リサイクルという新たな挑戦だ。
これまでにテレビなどでも取り上げられ、「廃棄の多いファッション業界を支える存在」として知られてきたこの企業だが、その代表者がいま注ぐエネルギーの矛先は、「売ること」ではなく「還すこと」にあるという。
商売としては「効率が悪い」でも、やる意味がある
「リサイクルで大きな利益は見込めない。だからこそ、本気でやる価値がある」。そう語るのは代表取締役の山本氏。現在、同社は年間約4000万点もの在庫を全国から引き受けているが、その一部をリサイクルする取り組みは、売上の数%程度にとどまる。
にもかかわらず、自らリサイクルに関する勉強会に足を運び、現場で働く人々の声を聞くなど、その熱意は本物だ。実際、リサイクルに関わる工場で一時的に作業員として働かせてもらったこともあるという。
「捨てられる服の先」にあるものを見てきた
このリサイクル事業の背景には、在庫処分の現場で見た「現実」がある。たとえば焼却処分の現場で燃やされる大量の新品衣料や、途上国で子どもが働いている縫製工場の光景。こうした体験が、「服を捨てるという行為が、誰かの努力をなかったことにするようで耐えられなかった」と山本氏は語る。
ブランド保護と焼却処分、その間で
ブランドの多くが「ブランド価値を守るため」として未使用の在庫を処分している現状に対し、「誰がどんな想いで作ったのかを大切にしてほしい」との想いが強まったという。焼却よりも、素材として循環させることこそが本来の“価値ある選択”であると信じ、同社では数年前から繊維リサイクルに着手。技術者や反毛工場とのネットワークも、自ら足を運んで構築してきた。
外資系ブランドとの協働も拡大
現在では、国内外のアパレルブランドからもリサイクルの依頼が寄せられるようになっている。特に品質管理や情報管理に厳しい外資ブランドとの取引が進むことは、同社の信頼性の証でもある。
「一番大事にしているのは、作り手への敬意。それを共有できる企業と、共に新しい循環の形を創っていきたい」と山本氏は話す。
【著者紹介】

株式会社shoichi代表取締役
所属団体:KanFa関西ファッション連合/日本繊維機械学会/JAFIC 一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会
大学在籍中からヤフーオークションでブランド商品・アパレル等の販売などを行い オークションで仕事をする自営業の道を選ぶ。 その後在庫処分ビジネスをスタートし、20年間在庫処分の業界に身を置く。 累計4000社のあらゆる在庫処分を手掛ける。
山本昌一プロフィール>>